情動伝染の個人特性と脳内ミラーシステム活動特性の関連

「1. 諸言」情動伝染とは他者の情動が伝播し自己のものとして知覚する事象であり, 社会的理解の根幹と言われている. 情動伝染についての研究では指標として表情筋筋電図が良く用いられる. 先行研究ではポジティブ情動の表出によって大頬骨筋, ネガティブ情動の表出によって皺眉筋の活動が高まることが知られている. 自己の行為実行時だけでなく, 他者の同一行為を観察するだけでも脳の運動関連領域が賦活することがわかっている. これはミラーシステムと呼ばれる. ミラーシステムの活性化は脳波のμ波を測定することによって知ることができる. μ波は安静時に中心溝付近で発生するα波と同帯域(8-13Hz)の脳波である...

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Published in日本生理人類学会誌 Vol. 21; no. 2; pp. 69 - 74
Main Authors 樋口, 重和, 池田, 悠稀, 西村, 悠貴, キム, ヨンキュ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理人類学会 2016
Japan Society of Physiological Anthropology
Subjects
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ISSN1342-3215
2432-0986
DOI10.20718/jjpa.21.2_69

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Summary:「1. 諸言」情動伝染とは他者の情動が伝播し自己のものとして知覚する事象であり, 社会的理解の根幹と言われている. 情動伝染についての研究では指標として表情筋筋電図が良く用いられる. 先行研究ではポジティブ情動の表出によって大頬骨筋, ネガティブ情動の表出によって皺眉筋の活動が高まることが知られている. 自己の行為実行時だけでなく, 他者の同一行為を観察するだけでも脳の運動関連領域が賦活することがわかっている. これはミラーシステムと呼ばれる. ミラーシステムの活性化は脳波のμ波を測定することによって知ることができる. μ波は安静時に中心溝付近で発生するα波と同帯域(8-13Hz)の脳波である. 閉眼安静時に後頭部優位に発生するα波が視覚刺激によって減少するのに対し, μ波は体性感覚刺激や動作の実行時に減少する. 実行時だけでなく動作の観察時にもμ波の抑制が起こることから, μ波はミラーシステムの活動指標として扱われる.
ISSN:1342-3215
2432-0986
DOI:10.20718/jjpa.21.2_69