留置マーカーの術中変位により肺切除範囲を拡大した転移性肺腫瘍の1例

触診が困難な小結節に対する肺部分切除術では,マーキングが有用である.近年,気管支鏡を用いたデジタルマーキング技術である,radiofrequency identification (RFID)が臨床応用された.RFIDマーキングは肺深部に存在する病変でも位置同定を可能とする.しかし,その合併症に関する報告はほとんどない.今回,気管支に留置されたRFIDタグが術中に変位する症例を経験したので報告する.患者は71歳,女性.転移性肺腫瘍疑い(左肺S10に8mm大の結節影)に対し,2箇所にRFIDタグを留置し,部分切除術を施行したところ,術中にタグの1つが気管支中枢側へ変位した.このタグを病変と一塊に...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 1; pp. 76 - 81
Main Authors 鶴田, 航大, 髙瀬, 貴章, 千葉, 慶宜, 宮島, 正博, 渡辺, 敦, 石井, 大智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.76

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Summary:触診が困難な小結節に対する肺部分切除術では,マーキングが有用である.近年,気管支鏡を用いたデジタルマーキング技術である,radiofrequency identification (RFID)が臨床応用された.RFIDマーキングは肺深部に存在する病変でも位置同定を可能とする.しかし,その合併症に関する報告はほとんどない.今回,気管支に留置されたRFIDタグが術中に変位する症例を経験したので報告する.患者は71歳,女性.転移性肺腫瘍疑い(左肺S10に8mm大の結節影)に対し,2箇所にRFIDタグを留置し,部分切除術を施行したところ,術中にタグの1つが気管支中枢側へ変位した.このタグを病変と一塊にして切除するため,結果的に切除肺の拡大を要した.原因として,鉗子の把持操作や自動縫合器による複数回のクランプが考えられた.部分切除では単一病変に対しタグ1つを末梢気管支に留置することを原則とし,留置部近傍での鉗子操作は避けるべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.76