魚骨穿孔から肝膿瘍・心タンポナーデへ至った1例

症例は80代,男性。40℃台の発熱を主訴に受診し入院となった。入院後のCTで肝外側区域の膿瘍と魚骨を疑う膿瘍内異物を認め,胃壁を貫いた魚骨による肝膿瘍と診断,同日経皮経肝膿瘍ドレナージ術を施行した。ドレナージ7日後に血圧低下,頻脈を認め,CTで魚骨先端が心囊腔へ達したことによる心タンポナーデと判断,緊急手術を施行した。術中所見では,胃壁から逸脱し肝外側区域および横隔膜を貫通する魚骨を認めた。魚骨を引き抜くと横隔膜貫通部から血性排液が約200mL排出された。肝外側区域切除,心囊ドレナージ術を施行し,術後15日目に退院した。魚骨による食道穿孔から心タンポナーデを生じた症例は報告されているが,腹腔内...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 43; no. 1; pp. 43 - 46
Main Authors 林, 忠毅, 原田, 岳, 尾﨑, 裕介, 松本, 旭生, 落合, 秀人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2023
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.43.43

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Summary:症例は80代,男性。40℃台の発熱を主訴に受診し入院となった。入院後のCTで肝外側区域の膿瘍と魚骨を疑う膿瘍内異物を認め,胃壁を貫いた魚骨による肝膿瘍と診断,同日経皮経肝膿瘍ドレナージ術を施行した。ドレナージ7日後に血圧低下,頻脈を認め,CTで魚骨先端が心囊腔へ達したことによる心タンポナーデと判断,緊急手術を施行した。術中所見では,胃壁から逸脱し肝外側区域および横隔膜を貫通する魚骨を認めた。魚骨を引き抜くと横隔膜貫通部から血性排液が約200mL排出された。肝外側区域切除,心囊ドレナージ術を施行し,術後15日目に退院した。魚骨による食道穿孔から心タンポナーデを生じた症例は報告されているが,腹腔内経路からの心膜損傷は国内では報告がない。本症例では魚骨が胃壁を貫き肝外側区域に達し,臓器の呼吸性移動や心拍動の影響により頭側へ移動した結果横隔膜を貫通し,心膜を損傷したものと考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.43.43