心腔内エコーガイド下の腫瘍生検にて直腸癌の転移性心臓腫瘍と診断し摘出を行った1症例

症例は65歳男性.直腸癌術後の経過観察目的に施行したCTにて右房内に腫瘤陰影を認め,当科紹介となった.経食道心エコーで上大静脈入口部付近に18×13 mmの比較的輝度の高い腫瘤を認めた.PET-CTでは同部にFDGの異常集積を認め,転移性心臓腫瘍が疑われたが,CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーの上昇やその他の臓器に転移の所見は認めず,sIL-2受容体の軽度上昇を認めていたため,悪性リンパ腫の可能性も考慮された.悪性リンパ腫では化学療法が第一選択となるため,腫瘍の組織診断目的に心腔内エコーガイド下に生検カテーテルにて腫瘍生検を施行し,病理組織から直腸癌を原発とする転移性心臓腫瘍と診断した.腫...

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Published in心臓 Vol. 51; no. 11; pp. 1175 - 1181
Main Authors 山本, 英雄, 末永, 知康, 宮田, 健二, 毛利, 正博, 川村, 奈津美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.11.2019
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.51.1175

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Summary:症例は65歳男性.直腸癌術後の経過観察目的に施行したCTにて右房内に腫瘤陰影を認め,当科紹介となった.経食道心エコーで上大静脈入口部付近に18×13 mmの比較的輝度の高い腫瘤を認めた.PET-CTでは同部にFDGの異常集積を認め,転移性心臓腫瘍が疑われたが,CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーの上昇やその他の臓器に転移の所見は認めず,sIL-2受容体の軽度上昇を認めていたため,悪性リンパ腫の可能性も考慮された.悪性リンパ腫では化学療法が第一選択となるため,腫瘍の組織診断目的に心腔内エコーガイド下に生検カテーテルにて腫瘍生検を施行し,病理組織から直腸癌を原発とする転移性心臓腫瘍と診断した.腫瘍は増大傾向であり,上大静脈閉塞による血行動態悪化や腫瘍塞栓が危惧されたため,腫瘍摘出術にて腫瘍を一塊切除した.術後15日目に自宅退院し,術後化学療法を外来で施行し,1年経過後も心臓腫瘍の再発や遠隔転移を認めずに経過している.転移性心臓腫瘍は,悪性腫瘍患者において稀ではなく,原発巣により心臓転移の頻度は異なる.一方で直腸結腸癌による転移性心臓腫瘍は稀である.非侵襲的な方法で心臓腫瘍の診断が困難な場合や組織診断の結果で治療方針が異なることが予想される場合は,腫瘍生検を考慮する必要があり,本症例は,心腔内エコーガイド下で腫瘍生検を安全に行い診断に至った.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.1175