子ヒツジの行動および生理反応に対する輸送行程の影響
世界的に動物福祉への関心が高まり, 家畜福祉の規制への具現化が進んでいる。それに伴い, 欧米では生体輸送に対しても規制が行われている。日本においても生体輸送時の福祉性の検討が必要である。そこで本研究は, 日本の地形的特徴である山間部における山道を含む輸送行程での家畜輸送時のストレス負荷の検討と評価を目的とした。実験には, 生後約4ヵ月齢の子ヒツジを用い, 2006年 (高速道多用) と2007年 (一般道と山道の距離増加) の7月に計2回の輸送を行った。伏臥位頭数における年と道路種との関連は有意であり (χ2=48.69, P<0.01), 一般道および山道において, 2006年よりも2...
Saved in:
Published in | 日本緬羊研究会誌 Vol. 2008; no. 45; pp. 13 - 19 |
---|---|
Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本緬羊研究会
20.12.2008
JAPANESE SOCIETY OF SHEEP SCIENCE |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-1305 2186-1013 |
DOI | 10.11595/jpnjsheepsci1964.2008.13 |
Cover
Summary: | 世界的に動物福祉への関心が高まり, 家畜福祉の規制への具現化が進んでいる。それに伴い, 欧米では生体輸送に対しても規制が行われている。日本においても生体輸送時の福祉性の検討が必要である。そこで本研究は, 日本の地形的特徴である山間部における山道を含む輸送行程での家畜輸送時のストレス負荷の検討と評価を目的とした。実験には, 生後約4ヵ月齢の子ヒツジを用い, 2006年 (高速道多用) と2007年 (一般道と山道の距離増加) の7月に計2回の輸送を行った。伏臥位頭数における年と道路種との関連は有意であり (χ2=48.69, P<0.01), 一般道および山道において, 2006年よりも2007年で伏臥位の観察頭数が期待頭数よりも少なく (P<0.001), 体の向きは左を除くすべての向きにおいて, 2006年では観察頭数が期待頭数よりも少なく, 2007年では観察頭数が期待頭数よりも多かった (前方χ2=178.77;後方χ2=81.44;右χ2=21.25;左χ2=23.73, すべてP<0.001) 。また, バランスを崩す回数は, 年間での有意な違いは見られなかったものの, 一般道および山道において高速道よりも有意にバランスを崩す回数が多かった (ともにP<0.01) 。発声は, 2006年では輸送開始直後にほとんど見られなかったのに対し, 2007年では輸送開始直後に多く見られ輸送開始後80分までに直線的に減少した (y=-0.131x+11.81, R2=0.798, P<0.01) 。これには, 輸送前における母ヒツジと子ヒツジの隔離の有無が影響していた可能性がある。心拍数, 直腸温, 血漿コルチゾール濃度, 血中乳酸濃度の輸送に伴う増加量が有意では無いものの2007年において2006年よりも大きかった。これらの結果から, 一般道および山道の距離増加により, 輸送中の子ヒツジに対するストレス負荷が少なからず増加するため, 可能な限り高速道を利用するなど最短距離で輸送し, それができない場合には, 車の揺れが大きくならないような運転を心がける必要がある。 |
---|---|
ISSN: | 0389-1305 2186-1013 |
DOI: | 10.11595/jpnjsheepsci1964.2008.13 |