脳梗塞が診断の契機となったValsalva洞動脈瘤の1例
Valsalva洞動脈瘤は稀な疾患であり,無症状または軽微な症状で経過することが多い.未破裂の場合,瘤化部は盲端であるため付近の血液乱流により内部に血栓形成をきたし,潜在的脳梗塞源の一つとなり得る.脳梗塞を契機に偶発的に診断されたValsalva洞動脈瘤の症例を経験したので報告する.症例は44歳,男性.幼少期から心室中隔欠損症を指摘されていたが,自己判断で成人期以降は通院を中断していた.反復性の脳梗塞のため入院され,全身の塞栓源の検索が行われた.経食道心エコーで小さな漏斗部心室中隔欠損と右冠洞部のValsalva洞動脈瘤を認めた.Valsalva洞動脈瘤内には血栓は認めなかったものの,smok...
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Published in | 心臓 Vol. 52; no. 12; pp. 1429 - 1435 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.12.2020
日本心臓財団・日本循環器学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.52.1429 |
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Summary: | Valsalva洞動脈瘤は稀な疾患であり,無症状または軽微な症状で経過することが多い.未破裂の場合,瘤化部は盲端であるため付近の血液乱流により内部に血栓形成をきたし,潜在的脳梗塞源の一つとなり得る.脳梗塞を契機に偶発的に診断されたValsalva洞動脈瘤の症例を経験したので報告する.症例は44歳,男性.幼少期から心室中隔欠損症を指摘されていたが,自己判断で成人期以降は通院を中断していた.反復性の脳梗塞のため入院され,全身の塞栓源の検索が行われた.経食道心エコーで小さな漏斗部心室中隔欠損と右冠洞部のValsalva洞動脈瘤を認めた.Valsalva洞動脈瘤内には血栓は認めなかったものの,smoke signがあり他に明らかな塞栓源を認めなかったことから,同部位が脳梗塞源と判断した.脳梗塞再発予防のためにDOACが開始され,以降は新規塞栓を認めなかった.4年後に右室内破裂をきたしたため当科に紹介され,外科的修復術が行われた.本症例のようなValsalva洞内に血栓形成が疑われる場合の治療法は確立していない.抗凝固療法は塞栓再発を予防する上では有効であったが,瘤破裂のリスクを考慮すると速やかな外科的修復術が行われるべきである.手術時期の判断については反省すべき点と考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.52.1429 |