ショック状態を呈した直腸癌に伴う内腸骨動脈直腸瘻の1 例

動脈腸管瘻は,消化管出血の原因としてはまれな病態であるが,大量出血から容易に致死的となりうる腹部救急疾患である。大動脈十二指腸瘻の報告が散見されるが,動脈下部消化管瘻の報告はまれであり,早期診断が難しいことなどから予後不良とされる。今回われわれは,大量下血からショックに陥った内腸骨動脈直腸瘻の患者に対し,IVR および腸管内のガーゼによる圧迫で救命した1 例を経験したため報告する。症例は56 歳男性。切除不能直腸癌に対し,化学放射線療法を施行後に化学療法中であった。下血を主訴に来院され,下部消化管内視鏡検査を施行中に大量出血をきたしショックに陥った。左内腸骨動脈直腸瘻と診断し塞栓術を行った。豊...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 42; no. 1; pp. 61 - 65
Main Authors 上原, 崇平, 武藤, 昌裕, 中屋, 誠一, 長﨑, 高也, 原田, 幸志朗, 坪井, 謙, 三井, 章, 瀧口, 修司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2022
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.42.61

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Summary:動脈腸管瘻は,消化管出血の原因としてはまれな病態であるが,大量出血から容易に致死的となりうる腹部救急疾患である。大動脈十二指腸瘻の報告が散見されるが,動脈下部消化管瘻の報告はまれであり,早期診断が難しいことなどから予後不良とされる。今回われわれは,大量下血からショックに陥った内腸骨動脈直腸瘻の患者に対し,IVR および腸管内のガーゼによる圧迫で救命した1 例を経験したため報告する。症例は56 歳男性。切除不能直腸癌に対し,化学放射線療法を施行後に化学療法中であった。下血を主訴に来院され,下部消化管内視鏡検査を施行中に大量出血をきたしショックに陥った。左内腸骨動脈直腸瘻と診断し塞栓術を行った。豊富な血流および側副血行路のため,塞栓術単独での完全止血は困難であった。肛門と双孔式人工肛門の肛門側よりガーゼを挿入しタンポンとすることにより止血を得,救命することができた。17 病日で退院し22 ヵ月後に原病死された。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.42.61