樹状細胞の伸展状態がソノポレーションによる膜損傷の発生率に与える影響

我々は,ソノポレーションを樹状細胞(DC)への抗原導入に応用することを目指し,カバーガラス上に接着培養したDCを用いて検討してきた.しかし,実際の免疫療法では,浮遊培養したDCに抗原を導入するプロトコルが用いられており,最適なソノポレーション条件も異なることが予想される.本研究では,カバーガラス上での伸展状態が異なる2種類のDCにソノポレーションを行い,膜損傷の発生率を比較した.実験にはマウス骨髄由来の樹状細胞株(DC2.4)を用いた.浮遊細胞は超音波の放射圧で容易に吹き飛ばされてしまうため,播種後の培養時間を0.5時間と48時間の2条件に設定し,足場上での伸展状態が異なる2つの試料,浮遊模擬...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual56; no. Abstract; p. S264
Main Authors 工藤, 信樹, 松本, 龍之介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual56.S264

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Summary:我々は,ソノポレーションを樹状細胞(DC)への抗原導入に応用することを目指し,カバーガラス上に接着培養したDCを用いて検討してきた.しかし,実際の免疫療法では,浮遊培養したDCに抗原を導入するプロトコルが用いられており,最適なソノポレーション条件も異なることが予想される.本研究では,カバーガラス上での伸展状態が異なる2種類のDCにソノポレーションを行い,膜損傷の発生率を比較した.実験にはマウス骨髄由来の樹状細胞株(DC2.4)を用いた.浮遊細胞は超音波の放射圧で容易に吹き飛ばされてしまうため,播種後の培養時間を0.5時間と48時間の2条件に設定し,足場上での伸展状態が異なる2つの試料,浮遊模擬細胞試料と接着細胞試料を作成した.培養後,細胞に直径約2 μmのバブルリポソームを1個付着させて中心周波数1 MHz,波数3波,最大負圧0.6 MPaの超音波パルスを1回照射し,蛍光染料(SYTOX Blue)で細胞膜の損傷を検出した.実験の結果,膜損傷率は接着細胞では93%(13/14),浮遊模擬細胞では30%(3/10)となり,培養足場への細胞接着状態が膜損傷の発生率に大きな影響を与えることが確認された.また超音波照射後に気泡が消失する割合は,接着細胞では78%,浮遊模擬細胞では10%であった.これは,浮遊模擬細胞が気泡の膨張・収縮を妨げているためと推測され,浮遊細胞へのソノポレーションでは,接着細胞よりも強い超音波照射が必要とされることが示された.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S264