結合織への薬物の分布

薬物の組織分布は薬物自体の物理化学的性質に大きく依存するばかりでなく, 分布に直接影響を及ぽす組織側の要因や吸収, 代謝および排泄過程でのさまざまな変動要因により左右される. ある種の薬物は投与後, 血管, 肺, 靭帯および皮膚をはじめとする結合織に親和性を有することが知られているが, このような場合, その機構として結合織に特徴的な架橋構造の形成や, その組織に特異的な酵素による代謝活性化などの関与が考えられている. 結合織の主要な繊維成分を構成する蛋白質としてはコラーゲンやエラスチンがあり, 組織内部の構造の恒常性維持と弾性機能の発現に重要な役割を果たしている. これらの繊維成分が力学的特...

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Published in薬物動態 Vol. 14; no. 1; pp. 55 - 56
Main Author 秋元, 雅之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬物動態学会 1999
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ISSN0916-1139
DOI10.2133/dmpk.14.55

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Summary:薬物の組織分布は薬物自体の物理化学的性質に大きく依存するばかりでなく, 分布に直接影響を及ぽす組織側の要因や吸収, 代謝および排泄過程でのさまざまな変動要因により左右される. ある種の薬物は投与後, 血管, 肺, 靭帯および皮膚をはじめとする結合織に親和性を有することが知られているが, このような場合, その機構として結合織に特徴的な架橋構造の形成や, その組織に特異的な酵素による代謝活性化などの関与が考えられている. 結合織の主要な繊維成分を構成する蛋白質としてはコラーゲンやエラスチンがあり, 組織内部の構造の恒常性維持と弾性機能の発現に重要な役割を果たしている. これらの繊維成分が力学的特性を有するためには架橋構造の形成が不可欠である. コラーゲンやエラスチンにおける架橋形成の第一段階はペプチド結合したリジン残基が酵素的にアルデヒド基に変換され, 他のアミノ酸のアミノ基あるいはアルデヒド基とSchiff塩基の形成あるいはAldol縮合で共有結合することによる. なお, これらの架橋形成に関わるリジン残基の数はエラスチンの場合コラーゲンと比較して多いと報告されている.
ISSN:0916-1139
DOI:10.2133/dmpk.14.55