高齢者慢性心不全における甲状腺機能異常と高ホモシステイン血症の合併は何を意味するか
目的:高齢者慢性心不全における甲状腺機能異常や高ホモシステイン(Hcy)血症と心血管イベントとの関連性について検討した. 対象と方法:甲状腺ホルモン(TSH,free-T3,free-T4)と血漿総ホモシステイン(tHcy)を測定し,5年間心血管イベント(心血管死)を観察しえた1437例のうち,65歳以上でfree-T4が正常値内の1126例(平均83±9歳)を,慢性心不全の425例と非心不全の701例に分けて検討した.潜在性甲状腺機能低下症(SCH)はfree-T4が正常値内で,TSHが正常上限を超えて10 μIU/L未満のもの,low-T3症候群(LT3S)はfree-T3が正常下限値未満...
Saved in:
| Published in | 心臓 Vol. 52; no. 12; pp. 1374 - 1387 |
|---|---|
| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.12.2020
日本心臓財団・日本循環器学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
| DOI | 10.11281/shinzo.52.1374 |
Cover
| Summary: | 目的:高齢者慢性心不全における甲状腺機能異常や高ホモシステイン(Hcy)血症と心血管イベントとの関連性について検討した. 対象と方法:甲状腺ホルモン(TSH,free-T3,free-T4)と血漿総ホモシステイン(tHcy)を測定し,5年間心血管イベント(心血管死)を観察しえた1437例のうち,65歳以上でfree-T4が正常値内の1126例(平均83±9歳)を,慢性心不全の425例と非心不全の701例に分けて検討した.潜在性甲状腺機能低下症(SCH)はfree-T4が正常値内で,TSHが正常上限を超えて10 μIU/L未満のもの,low-T3症候群(LT3S)はfree-T3が正常下限値未満で,かつfree-T4とTSHが正常値内のもの,高ホモシステイン(Hcy)血症は血漿tHcyが正常上限値13.5 nmol/mLを超えるものとした. 結果:SCHは高齢者慢性心不全の24.7%に,非心不全の4.0%に出現,LT3Sはそれぞれ29.9%と11.1%に出現,高Hcy血症はそれぞれ58.8%と26.2%に出現し,いずれも慢性心不全で多かった(p<0.001).Cox比例ハザード回帰の多変量解析で高齢者慢性心不全の5年生存率の寄与因子は,年齢,男性,BMI低値,BNP高値,血漿tHcy高値,LT3Sの合併,statin非服用,利尿薬服用であった.高齢者慢性心不全の5年生存率はSCHと正常TSH群で有意差はなく,LT3Sと高Hcy血症で有意に予後不良であった(log-rank p<0.001).高Hcy血症を合併する高齢慢性心不全でLT3Sの合併は5年生存率をさらに低下させたが(log-rank p<0.001),SCHの合併は5年生存率に影響しなかった. 結語:高齢者慢性心不全にSCHやLT3S,高Hcy血症がしばしば合併する.高齢者慢性心不全でSCHの合併は予後に影響しないが,LT3Sや高Hcy血症の合併は予後を不良にした.高Hcy血症にLT3Sを合併すれば5年生存率はさらに低下した. |
|---|---|
| ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
| DOI: | 10.11281/shinzo.52.1374 |