牛伝染性リンパ腫との鑑別に苦慮したホルスタイン種乳牛の脂肪壊死症の1症例

5歳7カ月齢のホルスタイン種乳牛の第四胃変位整復術時に第四胃周囲腫瘤を触知した.腸骨下リンパ節がわずかに腫大しており,直腸検査で直径1~3 cmの腫瘤を複数触知したためリンパ腫を疑診した.血液検査ではリンパ球増多症がみられたが,リンパ球の異型度は小さかった.末梢血リンパ球のB細胞クローナリティ解析ではマイナークローナルなピークを伴うポリクローナルを呈した.BLVプロウイルス量は623コピー/10 ng DNAと軽度高値を示した.血清LDH活性は2,586 U/ℓと高値を示したが,チミジンキナーゼ活性は2.0 U/ℓ未満であった.腸骨下リンパ節の細針吸引細胞診ではリンパ腫の所見は得られなかった....

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Published in産業動物臨床医学雑誌 Vol. 13; no. 5; pp. 213 - 218
Main Authors 猪熊, 壽, 永田, 健樹, 原田, 俊之, チェンバーズ, ジェームズ, 前澤, 誠希, 内田, 和幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会・九州沖縄産業動物臨床研究会 2022
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ISSN1884-684X
2187-2805
DOI10.4190/jjlac.13.213

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Summary:5歳7カ月齢のホルスタイン種乳牛の第四胃変位整復術時に第四胃周囲腫瘤を触知した.腸骨下リンパ節がわずかに腫大しており,直腸検査で直径1~3 cmの腫瘤を複数触知したためリンパ腫を疑診した.血液検査ではリンパ球増多症がみられたが,リンパ球の異型度は小さかった.末梢血リンパ球のB細胞クローナリティ解析ではマイナークローナルなピークを伴うポリクローナルを呈した.BLVプロウイルス量は623コピー/10 ng DNAと軽度高値を示した.血清LDH活性は2,586 U/ℓと高値を示したが,チミジンキナーゼ活性は2.0 U/ℓ未満であった.腸骨下リンパ節の細針吸引細胞診ではリンパ腫の所見は得られなかった.リンパ腫の診断に至らないまま7カ月間経過観察を行ったが発症はなく,乾乳時に自家廃用となった.病理解剖では第四胃周辺に脂肪壊死腫瘤が2個認められた.腸間膜や骨盤腔内,直腸周辺にも直径1~3 cm程度の脂肪壊死塊が複数みられた.左右飛節には化膿性飛節周囲炎が認められた.本症例は牛伝染性リンパ腫との鑑別が困難であったホルスタイン種乳牛の脂肪壊死症例であった.
ISSN:1884-684X
2187-2805
DOI:10.4190/jjlac.13.213