怠薬にて生じた冠攣縮が元来の不整脈基質に関与した心室細動の1例
症例は40歳代, 男性. 冠攣縮性狭心症と診断されていたが内服を自己中断していた患者. 以降, たびたび胸痛を認め, ニトログリセリンスプレーで速やかに症状は改善していたため受診せずにいた. 2009年12月に同様の胸痛を認め, ニトログリセリンスプレーでも胸痛の改善がみられなかったため, 救急車が要請された. 搬送時に心室細動を認め, 自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)で洞調律に復した. 来院時の心電図でII, III, aVFにて陰性T波, aVFで異常Q波を認め, 心筋逸脱酵素の上昇から虚血性心疾患を疑い, 冠動脈造影を施行し...
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Published in | 心臓 Vol. 43; no. 8; pp. 1102 - 1108 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2011
日本心臓財団 |
Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.43.1102 |
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Summary: | 症例は40歳代, 男性. 冠攣縮性狭心症と診断されていたが内服を自己中断していた患者. 以降, たびたび胸痛を認め, ニトログリセリンスプレーで速やかに症状は改善していたため受診せずにいた. 2009年12月に同様の胸痛を認め, ニトログリセリンスプレーでも胸痛の改善がみられなかったため, 救急車が要請された. 搬送時に心室細動を認め, 自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)で洞調律に復した. 来院時の心電図でII, III, aVFにて陰性T波, aVFで異常Q波を認め, 心筋逸脱酵素の上昇から虚血性心疾患を疑い, 冠動脈造影を施行したが冠動脈に有意狭窄は認められなかった. 心筋, 血流シンチグラム, 心臓MRIにて下後壁の陳旧性心筋梗塞が考えられたが, 冠動脈CTにおいては右冠動脈に明らかなプラーク破裂を示唆する所見は認められなかった. 後日アセチルコリン負荷試験を施行したところ意識消失前と同様の胸痛を認め, 右冠動脈#2から完全閉塞を生じ, 心電図ではII, III, aVFでST上昇を認めたが心室細動は生じなかった. Ca拮抗薬などの内服下で心臓電気生理学的検査を施行したところ多形性心室頻拍が誘発されたため, 患者, 家族と相談し, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)植え込みを行い退院した. 本例では, 陳旧性心筋梗塞巣の不整脈基質に加え, 怠薬とニトログリセリンの反応性の低下により冠攣縮時に心筋虚血を繰り返したため, 心室細動を生じたと考えられた. 致死的病態を引き起こす冠攣縮性狭心症の内服加療の重要性を再認識した症例を経験した. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.43.1102 |