好酸球性増多症を合併した心不全にステロイド治療が奏功した1例

症例は71歳男性,糖尿病性腎症・腎硬化症による維持透析例である.約2カ月前より労作時息切れが出現,うっ血性心不全と診断され当院へ紹介された.心電図ではⅡ,Ⅲ,aVF,V4-6に陰性T波が出現し,胸部X線写真では心拡大および両側胸水を認めた.心エコーでは全周性の壁運動低下を認め,左室駆出率は30%と低下していた.冠動脈造影では,左冠動脈主幹部および左前下行枝に留置されたステントに再狭窄を認めなかった.血液生化学的検査では,心筋逸脱酵素や炎症値の異常は認められなかったが,好酸球が2197/μL(白血球分画率27.3%)と著明な上昇を認めた.好酸球増多は,難治性アレルギー性皮膚炎によるものと考えられ...

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Published in心臓 Vol. 52; no. 7; pp. 727 - 733
Main Authors 福田, 正浩, 山内, 靖隆, 秋田, 孝子, 竹井, 達郎, 宮本, 明, 袴田, 尚弘, 久原, 亮二, 丸山, 高
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.07.2020
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.52.727

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Summary:症例は71歳男性,糖尿病性腎症・腎硬化症による維持透析例である.約2カ月前より労作時息切れが出現,うっ血性心不全と診断され当院へ紹介された.心電図ではⅡ,Ⅲ,aVF,V4-6に陰性T波が出現し,胸部X線写真では心拡大および両側胸水を認めた.心エコーでは全周性の壁運動低下を認め,左室駆出率は30%と低下していた.冠動脈造影では,左冠動脈主幹部および左前下行枝に留置されたステントに再狭窄を認めなかった.血液生化学的検査では,心筋逸脱酵素や炎症値の異常は認められなかったが,好酸球が2197/μL(白血球分画率27.3%)と著明な上昇を認めた.好酸球増多は,難治性アレルギー性皮膚炎によるものと考えられたが,好酸球数は以前に比較し著明に増加していた.心筋生検は患者の同意が得られず実施できなかったが,臨床症状から好酸球性心筋炎と診断し,プレドニゾロン30 mg/日の内服を開始した.治療後,好酸球数は速やかに正常化し,心不全および皮膚症状は著明に改善した.治療開始1カ月後の心エコーでは左室駆出率は51%まで改善し,プレドニゾロンを10 mg/日まで漸減するも経過良好である.好酸球性心筋炎は稀な疾患であるが,特に本例のようにアレルギー性疾患を合併した心不全例では,その可能性を念頭におき白血球分画に注意する必要がある.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.52.727