鈍的心損傷後の慢性期に心タンポナーデを発症し,左室瘤を認めた1例

心室瘤はその基礎疾患によっては極めて予後不良の疾患であり,破裂した場合は致死的となるといわれている.心室瘤の原因としては,心筋梗塞によるものが多く報告されてはいるが,心筋挫傷後に伴うものは稀である.今回の症例では,鈍的心損傷後に,一度消失した心嚢液が再度貯留し,慢性期に心タンポナーデを発症した.受傷時に認めた心嚢液は心筋の挫滅に伴う血性心嚢液であったが,慢性期に貯留した心嚢液は,その性状から心筋からの出血に加え,心筋や心膜の炎症によるものと推定された.心筋の瘢痕化に伴い,心尖部左室瘤も併発しており,心室壁も菲薄化していたことから準緊急的に左室形成術を施行した.受傷以降のCTやエコーでの経時的変...

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Published in心臓 Vol. 51; no. 8; pp. 816 - 823
Main Authors 朴澤, 麻衣子, 森野, 禎浩, 佐々木, 加弥, 山屋, 昌平, 松本, 裕樹, 木村, 琢己, 金, 一, 後藤, 巖, 中島, 悟史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.08.2019
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.51.816

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Summary:心室瘤はその基礎疾患によっては極めて予後不良の疾患であり,破裂した場合は致死的となるといわれている.心室瘤の原因としては,心筋梗塞によるものが多く報告されてはいるが,心筋挫傷後に伴うものは稀である.今回の症例では,鈍的心損傷後に,一度消失した心嚢液が再度貯留し,慢性期に心タンポナーデを発症した.受傷時に認めた心嚢液は心筋の挫滅に伴う血性心嚢液であったが,慢性期に貯留した心嚢液は,その性状から心筋からの出血に加え,心筋や心膜の炎症によるものと推定された.心筋の瘢痕化に伴い,心尖部左室瘤も併発しており,心室壁も菲薄化していたことから準緊急的に左室形成術を施行した.受傷以降のCTやエコーでの経時的変化からは左室瘤形成,心タンポナーデの発症は予測困難であった1例を経験したため報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.816