肝硬変を伴う慢性大動脈解離に対して,常温体外循環下で上行大動脈人工血管置換術を施行した1例

肝硬変は進行性の肝障害であり,凝固能異常などを合併する予後不良な疾患であるため,外科的治療に際して,術中から出血,肝機能増悪などのリスクが伴い,手術適応や術式の決定に際しては慎重な検討が必要とされている.今回,我々は肝硬変を合併した大動脈解離症例に対する手術を経験したので報告する.症例は64歳,女性.内科で食道静脈瘤を合併した肝硬変と診断され,病態評価目的のCTで,慢性Stanford A型大動脈解離の診断となった.食道静脈瘤の治療を先行した後に,待機的に常温体外循環下に上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後肝機能の悪化を認めず,術後21日目に独歩退院した.本症例では,大動脈遮断の位置を工夫...

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Published in心臓 Vol. 56; no. 8; pp. 829 - 834
Main Authors 田中 圭, 成瀬 瞳, 田口 真吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.08.2024
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.56.829

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Summary:肝硬変は進行性の肝障害であり,凝固能異常などを合併する予後不良な疾患であるため,外科的治療に際して,術中から出血,肝機能増悪などのリスクが伴い,手術適応や術式の決定に際しては慎重な検討が必要とされている.今回,我々は肝硬変を合併した大動脈解離症例に対する手術を経験したので報告する.症例は64歳,女性.内科で食道静脈瘤を合併した肝硬変と診断され,病態評価目的のCTで,慢性Stanford A型大動脈解離の診断となった.食道静脈瘤の治療を先行した後に,待機的に常温体外循環下に上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後肝機能の悪化を認めず,術後21日目に独歩退院した.本症例では,大動脈遮断の位置を工夫し,常温体外循環下に手術を行うことで,術後の不可逆的な肝機能障害を回避することができた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.56.829