大動脈弁輪拡張による大動脈弁閉鎖不全症に左室緻密化障害様形態を呈した1例

症例は43歳女性.これまで特記すべき既住歴はない.約3カ月前から出現した食思不振および安静時の呼吸困難を主訴に,うっ血性心不全の診断で入院となった.心エコー図検査では左室壁運動は全周性に低下し(左室駆出率36%),心室中部から心尖部にかけて側壁を中心に深い陥凹を伴う肉柱を形成し,緻密層と非緻密層の2層構造(同比1:2.6)を認め,カラードプラで肉柱の間隙への血流を呈していたことより左室緻密化障害の診断基準を満たした.また,大動脈弁輪拡張による重症大動脈弁閉鎖不全症を有していた.ACE阻害薬,β遮断薬,利尿薬で心不全コントロール後に大動脈基部置換術(Bentall手術)を施行,心機能の改善を得た...

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Published in心臓 Vol. 50; no. 2; pp. 190 - 196
Main Authors 京極, 幸子, 新山, 寛, 上村, 春甫, 加藤, 宏司, 原田, 晴仁, 甲斐, 久史, 髙瀬, 文敬
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.02.2018
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.50.190

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Summary:症例は43歳女性.これまで特記すべき既住歴はない.約3カ月前から出現した食思不振および安静時の呼吸困難を主訴に,うっ血性心不全の診断で入院となった.心エコー図検査では左室壁運動は全周性に低下し(左室駆出率36%),心室中部から心尖部にかけて側壁を中心に深い陥凹を伴う肉柱を形成し,緻密層と非緻密層の2層構造(同比1:2.6)を認め,カラードプラで肉柱の間隙への血流を呈していたことより左室緻密化障害の診断基準を満たした.また,大動脈弁輪拡張による重症大動脈弁閉鎖不全症を有していた.ACE阻害薬,β遮断薬,利尿薬で心不全コントロール後に大動脈基部置換術(Bentall手術)を施行,心機能の改善を得た(左室駆出率50%)が緻密化障害様形態は残存した.今回,大動脈弁輪拡張による大動脈弁閉鎖不全症に左室緻密化障害様形態を呈した1例を経験した.弁膜症など容量負荷が亢進する病態では肉柱の過剰形成が認められると報告があり,先天性との鑑別は困難である.成人で左室緻密化障害は過剰診断されやすく,統一した診断基準が求められる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.50.190