腹部大動脈狭窄の治療待機中に大動脈プラーク破綻を認めた1例

症例は62歳, 男性. 2010年2月ごろからの間欠性跛行を主訴に近医循環器科を受診. 両側足関節上腕血圧比(ankle brachial index; ABI)の低下を認め, 腹部大動脈造影で高度狭窄を認めた. さらに左冠動脈前下行枝に有意狭窄を認めたため, 当科紹介. 腹部大動脈狭窄に対しては, Yグラフトによる大動脈両側腸骨動脈バイパス手術も考慮されたが, 狭窄長が短いため, 血管内治療を施行する方針とした. 2010年5月, 治療当日の腹部大動脈造影では, 前医所見とは異なり狭窄部位のプラーク破綻を認め, 血管内超音波にても同様の所見を認めた. 大動脈の直径が2cmであったため, 自己...

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Published in心臓 Vol. 44; no. 5; pp. 583 - 590
Main Authors 柿﨑, 学, 寺田, 豊, 五十嵐, 厳, 伊藤, 宏, 渡邊, 博之, 小熊, 康教, 飯野, 健二, 小山, 崇, 小坂, 俊光, 野堀, 潔, 石田, 大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2012
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.44.583

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Summary:症例は62歳, 男性. 2010年2月ごろからの間欠性跛行を主訴に近医循環器科を受診. 両側足関節上腕血圧比(ankle brachial index; ABI)の低下を認め, 腹部大動脈造影で高度狭窄を認めた. さらに左冠動脈前下行枝に有意狭窄を認めたため, 当科紹介. 腹部大動脈狭窄に対しては, Yグラフトによる大動脈両側腸骨動脈バイパス手術も考慮されたが, 狭窄長が短いため, 血管内治療を施行する方針とした. 2010年5月, 治療当日の腹部大動脈造影では, 前医所見とは異なり狭窄部位のプラーク破綻を認め, 血管内超音波にても同様の所見を認めた. 大動脈の直径が2cmであったため, 自己拡張型ステントを2本並行に大動脈から左右総腸骨動脈にかけて留置し良好な拡張を得た. 術後経過は良好で, 下肢症状の改善とABIの上昇を認めた. 治療待機中の3カ月間ではblue toe syndromeやlivedo reticularisなどの動脈塞栓症状はなくABIの低下も認められなかった. 本症例は前医診断時から積極的な降圧療法, スタチンを含めた脂質管理を行っていたにもかかわらず, 3カ月という短期間での大動脈プラーク破綻をきたし, 造影にて確認し得た稀な症例であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.44.583