文献資料と現地調査によるサフラン栽培法の変遷検証:竹田式栽培法の特質

「1. 背景」アヤメ科のサフランCrocus sativus L. の雌蕊は, 古来, 香辛料として珍重されるとともに, 日本薬局方の初版から収載されている生薬である. サフランは加工の煩雑さから高値で取引され, 経済性の高い農作物であるが, 現在は国内消費量の大半が輸入で賄われており, 2017年の財務省貿易統計では1,779kgのサフランが輸入され, そのほとんどをスペイン産とイラン産が占めている. 一方, 日本国内でもわずかに栽培が行われており, その8割以上を産出しているとされるのが大分県竹田市である. 竹田市では, 諸外国で一般的に行われている露地栽培ではなく, 日本独自の手法である...

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Published in薬史学雑誌 Vol. 54; no. 1; pp. 31 - 38
Main Authors 髙浦(島田), 佳代子, 髙橋, 京子, 渡部, 親雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬史学会 2019
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ISSN0285-2314
2435-7529
DOI10.34531/jjhp.54.1_31

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Summary:「1. 背景」アヤメ科のサフランCrocus sativus L. の雌蕊は, 古来, 香辛料として珍重されるとともに, 日本薬局方の初版から収載されている生薬である. サフランは加工の煩雑さから高値で取引され, 経済性の高い農作物であるが, 現在は国内消費量の大半が輸入で賄われており, 2017年の財務省貿易統計では1,779kgのサフランが輸入され, そのほとんどをスペイン産とイラン産が占めている. 一方, 日本国内でもわずかに栽培が行われており, その8割以上を産出しているとされるのが大分県竹田市である. 竹田市では, 諸外国で一般的に行われている露地栽培ではなく, 日本独自の手法である室内栽培(竹田式)が行われてきた. 日本では, 1886年頃, 神奈川県の添田辰五郎氏がサフラン栽培を開始し, 1903年に吉良文平氏が大分県竹田市の玉来地区に種苗を導入, その後竹田式を考案し, 実践したとされる. 天候に左右されず, かつ採取作業が容易で生産効率の高い本手法により高品質のサフランを供給してきたが, 現在では農業従事者の高齢化や減少, また国産品に比べて安価な輸入サフランの流入により, 一時期は500kg近くあった生産量が近年では30kg以下に激減している.
ISSN:0285-2314
2435-7529
DOI:10.34531/jjhp.54.1_31