大動脈解離に対する大動脈人工血管置換術後のHCV抗体陽転化現象の検討―外科用接着剤による抗ウシ血清アルブミン抗体産生に伴う偽陽性反応に関して

大動脈解離に対する大動脈人工血管置換術(aortic graft replacement; AGR)後にC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus; HCV)抗体検査の陽転化現象が起き,原因がAGRに使用された外科用接着剤(BioGlue®)に含まれるウシ血清アルブミン(bovine serum albumin; BSA)に対して産生された抗BSA抗体による偽陽性反応であったことを報告する。AGR施行群4例(AGR群)と一般外科手術施行群10例(非AGR群)で術後2ヶ月目のHCV抗体をSiemens社(S社)試薬で測定した。AGR群全例でHCV抗体検査は陽転化し,非AGR群では全例陰...

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Published in医学検査 Vol. 68; no. 2; pp. 281 - 286
Main Authors 藤井, 隆, 杉山, 文, 村田, 竜也, 小澤, 優道, 水野, 誠士, 田中, 純子, 濱本, 正樹, 福岡, 達仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.04.2019
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.18-97

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Summary:大動脈解離に対する大動脈人工血管置換術(aortic graft replacement; AGR)後にC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus; HCV)抗体検査の陽転化現象が起き,原因がAGRに使用された外科用接着剤(BioGlue®)に含まれるウシ血清アルブミン(bovine serum albumin; BSA)に対して産生された抗BSA抗体による偽陽性反応であったことを報告する。AGR施行群4例(AGR群)と一般外科手術施行群10例(非AGR群)で術後2ヶ月目のHCV抗体をSiemens社(S社)試薬で測定した。AGR群全例でHCV抗体検査は陽転化し,非AGR群では全例陰性であった。AGR群4例の残余血清を5社のHCV抗体試薬で測定した結果,S社を含む2社で陽性,他3社で陰性を示した。またHCVコア抗原は全例陰性であった。さらに,AGR群の残余血清でBSA吸収試験と抗BSA抗体価測定を行った結果,前者は吸収を認め,後者は高値であった。従ってHCV抗体検査陽転化現象は,BioGlueにより産生された抗BSA抗体がS社のHCV抗体試薬の反応に影響を及ぼしたことによる偽陽性反応であると考えられた。免疫測定試薬においては抗BSA抗体による異常反応が起こりうることも考慮し検査結果を解釈することが大切である。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.18-97