巨大肝嚢胞に併発し救命し得た肺塞栓症の1例

症例は60歳の男性.他院で総胆管結石性胆管炎,胆嚢炎および巨大肝嚢胞と診断され,治療目的に当院へ転院となった.入院後,胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行され,肝嚢胞に対しては未治療で経過観察となった.術後リハビリテーションでの起立時にショックバイタルを呈し,造影CT検査にて肺動脈と右房内に血栓を認めたため,急性肺塞栓症の診断で緊急手術となった.原因として肝嚢胞の圧迫による下大静脈血栓が考えられた.手術は人工心肺補助心拍動下,常温で行い,右房と左右肺動脈主幹部を直接切開して新鮮血栓を摘出した.術後は抗凝固療法を開始し,D-dimerの減少を確認して術後51日目に独歩退院した.巨大肝嚢胞は深部...

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Published in心臓 Vol. 53; no. 1; pp. 95 - 100
Main Authors 武富, 龍一, 植野, 恭平, 影山, 理恵, 菅野, 恵, 緑川, 博文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.01.2021
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.53.95

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Summary:症例は60歳の男性.他院で総胆管結石性胆管炎,胆嚢炎および巨大肝嚢胞と診断され,治療目的に当院へ転院となった.入院後,胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行され,肝嚢胞に対しては未治療で経過観察となった.術後リハビリテーションでの起立時にショックバイタルを呈し,造影CT検査にて肺動脈と右房内に血栓を認めたため,急性肺塞栓症の診断で緊急手術となった.原因として肝嚢胞の圧迫による下大静脈血栓が考えられた.手術は人工心肺補助心拍動下,常温で行い,右房と左右肺動脈主幹部を直接切開して新鮮血栓を摘出した.術後は抗凝固療法を開始し,D-dimerの減少を確認して術後51日目に独歩退院した.巨大肝嚢胞は深部静脈血栓症の危険因子の一つと認識すべきであり,巨大肝嚢胞の手術適応として下大静脈の圧排所見も考慮する必要があるかもしれない.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.53.95