障害者複合施設における25年間の全身麻酔下歯科治療の実態調査

当施設は障害者(児)のための社会福祉施設で,歯科では,入所者と外来患者の歯科治療を行っており,知的能力障害などで体動があるなどの場合は,全身麻酔(以下,GA)下歯科治療を行っている.障害者の歯科治療の医療連携をスムーズに行うための情報提供を目的に,当科での25年間のGA下歯科治療の実態を調査した.延べ症例数112,093例(入所者70,884例,外来患者41,209例)のうちGA症例は368例(入所者80例,外来患者288例)で,年度別平均は14.7例であった.GA症例は,診療開始から5年は入所者のほうが多かったが,その後は外来患者が中心となった.年齢は21~30歳が最も多く(33.7%),男...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 42; no. 3; pp. 293 - 299
Main Authors 関野, 麗子, 永井, 梨菜, 大久保, 典子, 飯野, さかえ, 内田, 淳, 三野, 元崇, 中嶋, 智子, 那須, 大介, 黒木, 洋祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 31.10.2021
日本障害者歯科学会
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.42.293

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Summary:当施設は障害者(児)のための社会福祉施設で,歯科では,入所者と外来患者の歯科治療を行っており,知的能力障害などで体動があるなどの場合は,全身麻酔(以下,GA)下歯科治療を行っている.障害者の歯科治療の医療連携をスムーズに行うための情報提供を目的に,当科での25年間のGA下歯科治療の実態を調査した.延べ症例数112,093例(入所者70,884例,外来患者41,209例)のうちGA症例は368例(入所者80例,外来患者288例)で,年度別平均は14.7例であった.GA症例は,診療開始から5年は入所者のほうが多かったが,その後は外来患者が中心となった.年齢は21~30歳が最も多く(33.7%),男性のほうが多かった(67.1%).障害の内訳は知的能力障害が最も多かった.平均治療時間は94.5分,平均麻酔時間は139.5分であった.筋弛緩薬がベクロニウム臭化物からロクロニウム臭化物に変わったことで麻酔導入時間は短縮し,亜酸化窒素が使用されなくなったが覚醒時間には影響しなかった.周術期合併症は4.9%(18例)にみられたが,いずれも重症化せず改善した.障害者の歯科治療の医療連携を充実させるため,外来患者を中心に安全な日帰りGA下歯科治療を行い,一度GAを行った患者に対してはリコールでの口腔内診査とトレーニングを通して静脈内鎮静法下や通常下での歯科治療を可能にすることが重要である.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.42.293