術中輸液量の決定要素

周術期の輸液不足は有効な循環血液量の低下から組織灌流低下をきたし, 多すぎる輸液は組織の浮腫から心肺機能障害などさまざまな問題を生じる可能性が示唆されている. したがって, 不足でも過剰でもない最適な輸液量を投与することは患者予後に影響しうる重要なテーマである. 従来, 周術期輸液量の決定には患者・手術因子から必要な輸液量を推定するアプローチが用いられてきたが, その生理学的根拠は近年疑問視されている. 一方, 組織灌流などに関わる指標について目標値を設定し, それを目指して輸液を行う目標指向型療法の有効性を検証する研究が多数行われ, 術後肺炎, 創部感染, 吻合部リークなどの合併症の減少が報...

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Published in外科と代謝・栄養 Vol. 58; no. 4; pp. 115 - 118
Main Author 溝田, 敏幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本外科代謝栄養学会 15.08.2024
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ISSN0389-5564
2187-5154
DOI10.11638/jssmn.58.4_115

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Summary:周術期の輸液不足は有効な循環血液量の低下から組織灌流低下をきたし, 多すぎる輸液は組織の浮腫から心肺機能障害などさまざまな問題を生じる可能性が示唆されている. したがって, 不足でも過剰でもない最適な輸液量を投与することは患者予後に影響しうる重要なテーマである. 従来, 周術期輸液量の決定には患者・手術因子から必要な輸液量を推定するアプローチが用いられてきたが, その生理学的根拠は近年疑問視されている. 一方, 組織灌流などに関わる指標について目標値を設定し, それを目指して輸液を行う目標指向型療法の有効性を検証する研究が多数行われ, 術後肺炎, 創部感染, 吻合部リークなどの合併症の減少が報告されている.多様な目標指向型療法のプロトコルが報告されているが, 多くはまず輸液反応性の指標を用いて血管内容量の不足を補い, そのうえで心拍出量などの組織灌流に関わる指標を適正化するというものである. 現存のエビデンスからは, 組織灌流の指標や輸液反応性の指標が術中輸液量を決定する重要な要素と考えられる.
ISSN:0389-5564
2187-5154
DOI:10.11638/jssmn.58.4_115