術前口腔環境の適正化

口腔内には, 歯周病という隠れた術前の遠隔部位感染が存在していることが多く, 感染源の治療やバイオフィルムの除去といった口腔管理 (歯科治療や口腔ケア) による術前口腔環境の適正化は, 術後合併症に対して予防効果を示す. 従来, 口腔管理といえば肺炎予防であったが, 最近, 消化器外科領域で最も多い合併症である手術部位感染 (Surgical site infection : 以下SSI) の発生率が口腔管理により有意に減少することが明らかになった. また, 術前術後に十分な口腔管理を実施することで, 術後麻痺性イレウスの減少効果も期待できることがわかってきた. 口腔管理による感染予防は, 抗...

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Published in外科と代謝・栄養 Vol. 55; no. 5; pp. 166 - 169
Main Authors 眞次, 康弘, 延原, 浩, 伊藤, 圭子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本外科代謝栄養学会 2021
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ISSN0389-5564
2187-5154
DOI10.11638/jssmn.55.5_166

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Summary:口腔内には, 歯周病という隠れた術前の遠隔部位感染が存在していることが多く, 感染源の治療やバイオフィルムの除去といった口腔管理 (歯科治療や口腔ケア) による術前口腔環境の適正化は, 術後合併症に対して予防効果を示す. 従来, 口腔管理といえば肺炎予防であったが, 最近, 消化器外科領域で最も多い合併症である手術部位感染 (Surgical site infection : 以下SSI) の発生率が口腔管理により有意に減少することが明らかになった. また, 術前術後に十分な口腔管理を実施することで, 術後麻痺性イレウスの減少効果も期待できることがわかってきた. 口腔管理による感染予防は, 抗菌薬による感染予防と異なり, 耐性菌や日和見感染の心配がまったくない安全で効果的な方法である. 今のところエビデンスが不十分なため, SSI予防ガイドラインや, enhanced recovery after surgery (ERAS) プログラムの中に, 口腔管理は記載されていないが, 今後, さらなるエビデンス集積が進められ, 周術期管理の重要な役割を果たすことが期待される.
ISSN:0389-5564
2187-5154
DOI:10.11638/jssmn.55.5_166