膵癌の大網への腹膜播種が右鼠径ヘルニア嵌頓を来した1例

膵癌の大網への腹膜播種が右鼠径ヘルニア嵌頓を来した1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.主訴は右鼠径部膨隆,嘔吐,腹痛.3週間前から右鼠径部膨隆が出現していた.腹痛と嘔吐が出現したため近医を受診し,右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で当院へ救急搬送された.造影CTでは膵尾部に乏血性腫瘤,多発肝転移を疑う占拠性病変,腹水を認めた.右鼠径ヘルニアには大網の脱出が認められた.用手的還納は困難であったため緊急手術を行った.鼠径部切開法でヘルニア嚢を開放すると内部には大網の播種結節と腹水が認められた.脱出嵌頓していた大網は切除し,鼠径ヘルニアの修復を行った.病理検査では腺癌が認められ,膵癌からの転移と診...

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Published in膵臓 Vol. 39; no. 5; pp. 342 - 347
Main Authors 林, 次郎, 髙岡, 宗徳, 澁谷, 明広, 浦上, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本膵臓学会 31.10.2024
日本膵臓学会
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.39.342

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Summary:膵癌の大網への腹膜播種が右鼠径ヘルニア嵌頓を来した1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.主訴は右鼠径部膨隆,嘔吐,腹痛.3週間前から右鼠径部膨隆が出現していた.腹痛と嘔吐が出現したため近医を受診し,右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で当院へ救急搬送された.造影CTでは膵尾部に乏血性腫瘤,多発肝転移を疑う占拠性病変,腹水を認めた.右鼠径ヘルニアには大網の脱出が認められた.用手的還納は困難であったため緊急手術を行った.鼠径部切開法でヘルニア嚢を開放すると内部には大網の播種結節と腹水が認められた.脱出嵌頓していた大網は切除し,鼠径ヘルニアの修復を行った.病理検査では腺癌が認められ,膵癌からの転移と診断された.術後は急速に腹水が増加し,術後11日で死亡した.膵癌の腹膜播種が要因となって鼠径ヘルニアが出現することは稀で,その中でも大網への腹膜播種が鼠径ヘルニア嵌頓を来した症例は極めて稀であった.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.39.342