酸アルカリによる下咽頭食道狭窄に対する再建手術

自殺企図目的で生じた酸アルカリ腐食による下咽頭食道の狭窄と縦隔の高度な瘢痕形成のため, 胸骨前の食道再建を行った2症例を報告した. 症例1は66歳男性で, アルカリ摂取後の高度な食道狭窄のため, 回腸および右半結腸を用い胸骨前で食道再建を行った. また下咽頭の完全閉塞と喉頭入口部の瘢痕性狭窄を合併するため, 嚥下機能を優先して, 喉頭全摘出を行った. 手術後吻合部 (中咽頭から回腸) の通過性は良好だが, 結腸の腸管運動が不良のため嚥下困難や通過障害が残存し, 現在空腸瘻より経腸栄養を併用している. 症例2は81歳女性で, 酸摂取後の高度な食道狭窄のため空腸を用い胸骨前で食道再建を行った. 術...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 102; no. 8; pp. 976 - 982
Main Authors 山田, 信幸, 小笠原, 寛, 垣淵, 正男, 八田, 千広, 栗花, 落昌和, 中井, 謙之, 吉永, 和正, 阪上, 雅史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 1999
日本耳鼻咽喉科学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.102.976

Cover

More Information
Summary:自殺企図目的で生じた酸アルカリ腐食による下咽頭食道の狭窄と縦隔の高度な瘢痕形成のため, 胸骨前の食道再建を行った2症例を報告した. 症例1は66歳男性で, アルカリ摂取後の高度な食道狭窄のため, 回腸および右半結腸を用い胸骨前で食道再建を行った. また下咽頭の完全閉塞と喉頭入口部の瘢痕性狭窄を合併するため, 嚥下機能を優先して, 喉頭全摘出を行った. 手術後吻合部 (中咽頭から回腸) の通過性は良好だが, 結腸の腸管運動が不良のため嚥下困難や通過障害が残存し, 現在空腸瘻より経腸栄養を併用している. 症例2は81歳女性で, 酸摂取後の高度な食道狭窄のため空腸を用い胸骨前で食道再建を行った. 術後通過障害はなかったが, 食事に対する意欲が乏しく摂取量が少なかった. 上部消化管造影では吻合部の通過性は良好で誤嚥も認めなかった. 精神科的治療により徐々に食事量が増加し, 術後2ヵ月で7分粥が全量摂取可能となった. 両症例とも縦隔内は瘢痕化していたため, 食道は抜去せず離断した残存食道の上端を頸部皮膚瘻とし, 再建経路は胸骨前とした. 胸骨前を再建経路とした場合, 再建食道に用いる消化管上端部の血流不全が問題であるため, 再建食道上端部の血管と頸部の血管との血管吻合を行い (super charge) 良好な結果を得た. 腐食性食道炎後の食道再建治療は再建時期, 再建材料, 再建方法についてその症例に応じた方法を考慮し, 耳鼻咽喉科医も治療に積極的に参加すべきと思われた. また食事に対する意欲が乏しい症例に対しては, 精神的ケアが重要と思われた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.102.976