耳漏を伴う中耳真珠腫例に対する外耳道再建術の評価

目的: 本研究は外耳道削除型鼓室形成術・外耳道再建術 (canal wall down tympanoplasty with canal reconstruction) の術後安定性に, 術前耳漏の有無がどのように影響を示すのか検討することを目的に行われた. 対象および方法: 自家組織によるCanal wall down tympanoplasty with canal reconstructionを施行した155耳の中耳真珠腫症耳を対象とした. これらのうち, 手術時まで耳漏を認めていた56耳と耳漏がみられなかった99耳について比較検討した. また, 術前2カ月の間に耳漏が認められた80耳と...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 104; no. 8; pp. 805 - 814
Main Authors 鴫原, 俊太郎, 池田, 稔, 生井, 明浩, 山内, 由紀, 吉田, 晋也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 2001
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.104.805

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Summary:目的: 本研究は外耳道削除型鼓室形成術・外耳道再建術 (canal wall down tympanoplasty with canal reconstruction) の術後安定性に, 術前耳漏の有無がどのように影響を示すのか検討することを目的に行われた. 対象および方法: 自家組織によるCanal wall down tympanoplasty with canal reconstructionを施行した155耳の中耳真珠腫症耳を対象とした. これらのうち, 手術時まで耳漏を認めていた56耳と耳漏がみられなかった99耳について比較検討した. また, 術前2カ月の間に耳漏が認められた80耳と, 認められなかった75耳についても比較検討した. 検討は, 術後早期の問題点, 術後1年以上経過した耳における鼓膜・再建外耳道の状態, および術後聴力について行った. 結果: 1) 局所感染および外耳道再建材料の壊死が, 術前に耳漏のみられた例で有意に高率に認められた. 局所感染を生じた耳では組織壊死がより高率にみられ, 術後の耳内乾燥が遅延した. 2) 1年以上経過した例での鼓膜・再建外耳道の所見には, 術前の耳漏の有無は有意の影響を示さなかった. 3) 術後の聴力予後に対し, 術前の耳漏の有無は有意の影響を示さなかった. 結論: 術前に耳漏を認めた例において上記の術式を採用する場合, 術後早期の局所処置には注意が必要と思われた. しかし術後1年以上を経過した症例の術後成績についての検討では, 術前の耳漏の有無がそれらの成績に影響は示すという明らかな関連性は認められなかった.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.104.805