上部尿路癌に対する根治的腎尿管全摘後の膀胱内再発

上部尿路癌に対する根治的腎尿管全摘術後の膀胱内再発は約20~50%と高頻度に認められる.膀胱内再発のメカニズムとして,一連の尿路上皮からの多中心性発生とする説と,上部尿路から膀胱への腫瘍細胞腔内播種によるとする説が示されており,これらが混在しているものと考えられている.  腫瘍細胞の腔内播種による膀胱内再発に関する臨床的検討として,THPMG Trialの副次的解析,東北EBMフォーラムにおける多施設共同研究での後向き解析を報告している.THPMG Trialでの無作為比較試験の結果,根治的腎尿管全摘術直後のピラルビシン単回膀注により術後の膀胱内再発を抑制し得ることが示された.このTrialの...

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Published inJapanese Journal of Endourology Vol. 29; no. 1; pp. 85 - 90
Main Authors 伊藤, 明宏, 山下, 慎一, 荒井, 陽一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本泌尿器内視鏡学会 2016
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ISSN2186-1889
2187-4700
DOI10.11302/jsejje.29.85

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Summary:上部尿路癌に対する根治的腎尿管全摘術後の膀胱内再発は約20~50%と高頻度に認められる.膀胱内再発のメカニズムとして,一連の尿路上皮からの多中心性発生とする説と,上部尿路から膀胱への腫瘍細胞腔内播種によるとする説が示されており,これらが混在しているものと考えられている.  腫瘍細胞の腔内播種による膀胱内再発に関する臨床的検討として,THPMG Trialの副次的解析,東北EBMフォーラムにおける多施設共同研究での後向き解析を報告している.THPMG Trialでの無作為比較試験の結果,根治的腎尿管全摘術直後のピラルビシン単回膀注により術後の膀胱内再発を抑制し得ることが示された.このTrialの副次的解析では,術前尿細胞診陽性が術後膀胱再発の危険因子であり,術前尿細胞診陽性の患者に術直後単回ピラルビシン膀注を行うことで膀胱再発の抑制が認められたことから,膀胱内再発は手術の影響により,術後に生じるものと推察された.そこで,膀胱内の再発部位の検討により,副次的解析および多施設での後向き解析ともに,膀胱再発はカフ切除部周囲,膀胱後壁,膀胱頸部に多く認められたことから,膀胱内に播種して浮遊している腫瘍細胞が,膀胱への手術操作や尿道カテーテル留置によって損傷を受けた上皮に接着して腫瘍を形成するものと推察された.  さらに,多施設での後向き解析の結果,非筋層浸潤性上部尿路癌においては,膀胱再発が予後に影響する危険因子であることが示された.このことから,根治的腎尿管全摘術直後単回ピラルビシン膀注は,播種性再発による膀胱内再発を予防する目的と考えているが,予後の改善に寄与する可能性も期待される.
ISSN:2186-1889
2187-4700
DOI:10.11302/jsejje.29.85