直腸癌術後の排便障害:低位前方切除後症候群

直腸癌に対する括約筋温存術(SPO)の低位吻合では、術後に頻便・便失禁、分割便、便意切迫などの排便障害としての低位前方切除後症候群(LARS)をきたす。その発生頻度は80-90%で、生活の質(Quality of life:QOL)に影響を与える重症LARSにおいては約40%と高い。中には術後10年以上経過した患者にも認められたとする報告もあり、長期にわたって患者のQOLに影響を与えている。重症LARSの危険因子には、術前化学放射線療法、直腸間膜全切除、縫合不全、一時的ストーマ、吻合部の高さがある。LARSの治療には食事指導、薬物療法、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法、...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 Vol. 38; no. 2; pp. 50 - 59
Main Authors 船橋, 公彦, 甲田, 貴丸, 古田, 雅, 小椋, 遼治, 長嶋, 康雄, 保刈, 伸代, 守口, 淳子, 斎藤, 容子, 山西, 由里子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 2022
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1882-0115
2434-3056
DOI10.32158/jsscr.38.2_50

Cover

More Information
Summary:直腸癌に対する括約筋温存術(SPO)の低位吻合では、術後に頻便・便失禁、分割便、便意切迫などの排便障害としての低位前方切除後症候群(LARS)をきたす。その発生頻度は80-90%で、生活の質(Quality of life:QOL)に影響を与える重症LARSにおいては約40%と高い。中には術後10年以上経過した患者にも認められたとする報告もあり、長期にわたって患者のQOLに影響を与えている。重症LARSの危険因子には、術前化学放射線療法、直腸間膜全切除、縫合不全、一時的ストーマ、吻合部の高さがある。LARSの治療には食事指導、薬物療法、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法、仙骨神経刺激療法があり、これらに効果が期待できない場合には最終的に永久的ストーマ造設が選択される。今後下部直腸癌に対するSPOがますます積極的に行われる中で、長期にわたって患者のQOLに直接影響を与え続けるLARSに対する対応は急務で、複数の医療者が協働して集学的に対応していくことが必要である。
ISSN:1882-0115
2434-3056
DOI:10.32158/jsscr.38.2_50