超選択的動注化学療法施行後にコレステロール塞栓症を発症した口底癌の1例

コレステロール塞栓症は,大血管壁にある粥腫が破綻し,コレステロール結晶が血中に流出することで末梢に塞栓をきたす疾患であり,カテーテル検査や心臓血管手術などが原因で発症する。今回,われわれは超選択的動注化学療法施行後にコレステロール塞栓症を発症した口底癌の1例を経験したので,その概要を報告する。症例は81歳男性,右側口底癌(T2N1M0,StageⅢ)。臓器機能温存を強く希望したため,放射線治療(66Gy)併用で計4回のSeldinger法による超選択的動注化学療法(CDDP)を施行した。5回目の超選択的動注化学療法を行う前に,右足趾の疼痛,紫紅色斑の出現と急激な腎機能低下(血清Cr値:1.92...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 34; no. 4; pp. 183 - 189
Main Authors 佐々木, 敬則, 土橋, 恵, 出張, 裕也, 宮﨑, 晃亘, 中井, 裕美, 岡本, 準也, 荻, 和弘, 笹谷, 聖, 都倉, 尭明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2022
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.34.183

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Summary:コレステロール塞栓症は,大血管壁にある粥腫が破綻し,コレステロール結晶が血中に流出することで末梢に塞栓をきたす疾患であり,カテーテル検査や心臓血管手術などが原因で発症する。今回,われわれは超選択的動注化学療法施行後にコレステロール塞栓症を発症した口底癌の1例を経験したので,その概要を報告する。症例は81歳男性,右側口底癌(T2N1M0,StageⅢ)。臓器機能温存を強く希望したため,放射線治療(66Gy)併用で計4回のSeldinger法による超選択的動注化学療法(CDDP)を施行した。5回目の超選択的動注化学療法を行う前に,右足趾の疼痛,紫紅色斑の出現と急激な腎機能低下(血清Cr値:1.92mg/dl,eGFR値:26.9ml/min)を認め,当院皮膚科で施行した組織生検でコレステロール塞栓症の病理組織学的診断を得た。ステロイドおよびプロスタサイクリン(PGI2)製剤経口投与により右足趾の疼痛は改善を認めたが,腎機能は改善しなかった。ステロイド治療終了後,外来で経過観察を行っていたところ,3か月後に頸部リンパ節の再増大を認め,全身薬物療法を開始したが,10か月後に肺炎により他病死した。Seldinger法では1%程度で脳梗塞が発症すると報告されている。一方,コレステロール塞栓症の発症は非常にまれではあるものの,血液透析に移行する可能性の高い予後不良な疾患である。治療法選択の際には十分に念頭に置くべき疾患の1つと考えられた。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.34.183