先天性銅代謝異常症-Wilson病の分子遺伝学、病態解析及び治療に関する国際的な比較研究

【はじめに】銅は生体内にとって必須の微量元素で, 成人体内に70-100mg存在し, 数多く存在する銅酵素の構成成分である. 食物から吸収された銅は肝臓に運ばれ, 肝細胞で代謝される. 銅代謝において, 肝臓は中心的な役割を果たしている. 正常な肝臓では銅の主な分泌機構は2つあり, 1つは, 胆汁への排出, もう1つはセルロプラスミンとしての血液への排出である[1]. wilson病(WD, OMIM#27790)は常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である. つまり, 保因者同士が結婚する場合は生まれた子どもがWD患者である可能性は25%, 正常の可能性は25%, 保因者の可能性は50%で...

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Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 20; no. 1; pp. 47 - 54
Main Author 顧 艶紅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 2009
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ISSN0916-717X
1880-1404
DOI10.11299/brte.20.47

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Summary:【はじめに】銅は生体内にとって必須の微量元素で, 成人体内に70-100mg存在し, 数多く存在する銅酵素の構成成分である. 食物から吸収された銅は肝臓に運ばれ, 肝細胞で代謝される. 銅代謝において, 肝臓は中心的な役割を果たしている. 正常な肝臓では銅の主な分泌機構は2つあり, 1つは, 胆汁への排出, もう1つはセルロプラスミンとしての血液への排出である[1]. wilson病(WD, OMIM#27790)は常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である. つまり, 保因者同士が結婚する場合は生まれた子どもがWD患者である可能性は25%, 正常の可能性は25%, 保因者の可能性は50%である. WDは1912年にKinner Wilsonが肝硬変を伴う家族性進行性神経障害の家族例を報告したことに始まる[2]. その後本症の病態は肝臓や脳の銅蓄積であることがわかり[3], 1956年にWalsheによりキレート薬であるペニシラミンの治療が導入された[4].
ISSN:0916-717X
1880-1404
DOI:10.11299/brte.20.47