歯周病専門医の考えるインプラント周囲炎の予防的アプローチ

インプラント周囲炎は,細菌のバイオフィルムにより惹起されるインプラント周囲の炎症状態と定義される.これらの炎症の原因となるインプラント周囲のバイオフィルムは,感受性の高い宿主に対してインプラント周囲のさらなる感染を広げる可能性があるが,その組織は局所的な環境の影響を受け,残存天然歯の細菌叢に非常に似ている.したがって,歯周病を治療していない,深い歯周ポケットが残存している,口腔衛生状態が悪いといった患者はインプラント周囲炎の進行が早まるリスクに曝されている.それゆえ,歯周病を有する患者においては,インプラント体埋入に先立ってプロービング時出血を伴う残存ポケットの改善や,骨縁下欠損を取り除くため...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 37; no. 3; pp. 203 - 212
Main Author 船越, 栄次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 30.09.2024
日本口腔インプラント学会
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ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.37.203

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Summary:インプラント周囲炎は,細菌のバイオフィルムにより惹起されるインプラント周囲の炎症状態と定義される.これらの炎症の原因となるインプラント周囲のバイオフィルムは,感受性の高い宿主に対してインプラント周囲のさらなる感染を広げる可能性があるが,その組織は局所的な環境の影響を受け,残存天然歯の細菌叢に非常に似ている.したがって,歯周病を治療していない,深い歯周ポケットが残存している,口腔衛生状態が悪いといった患者はインプラント周囲炎の進行が早まるリスクに曝されている.それゆえ,歯周病を有する患者においては,インプラント体埋入に先立ってプロービング時出血を伴う残存ポケットの改善や,骨縁下欠損を取り除くための歯周病治療を完了しておくべきである.そこで今回,当診療所で行っているインプラント周囲炎を未然に防ぐことを念頭においた治療,すなわち深い歯周ポケットを伴った水平性骨欠損や,骨縁下欠損を伴った重度の歯周炎を,具体的にどのように対応しているかについて,臨床例を通して歯周病専門医の立場から考察してみたい.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.37.203