ダメージコントロールサージェリーを適用した 非閉塞性腸管虚血症の1救命例

症例は80 歳代,女性。他院での入院中,腹痛・嘔吐を認め,血圧低下・意識障害を呈したため当院救命センターへ転院となった。初療時GCS E4V2M5,ドパミン 3.5μg/kg/min 投与下で血圧 53/13mmHg,著明な代謝性アシドーシス・高乳酸血症を呈した。腹部造影CT で広範囲の小腸壊死が疑われたが,上腸管膜動脈の血流に異常を認めず,非閉塞性腸管虚血症(NOMI)と考えられた。低体温と凝固異常を認めたため,一刻も早いショックからの離脱を目的に,再建を伴わない広範囲小腸切除術を短時間で施行し,ただちに集中治療を開始した。翌日に生理学的異常の改善を認め,残存壊死小腸の追加切除と腸吻合術を二...

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Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 16; no. 5; pp. 696 - 701
Main Authors 菊田, 正太, 畑, 倫明, 瓜園, 泰之, 奥地, 一夫, 關, 匡彦, 福島, 英賢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床救急医学会 01.10.2013
日本臨床救急医学会
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ISSN1345-0581
2187-9001
DOI10.11240/jsem.16.696

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Summary:症例は80 歳代,女性。他院での入院中,腹痛・嘔吐を認め,血圧低下・意識障害を呈したため当院救命センターへ転院となった。初療時GCS E4V2M5,ドパミン 3.5μg/kg/min 投与下で血圧 53/13mmHg,著明な代謝性アシドーシス・高乳酸血症を呈した。腹部造影CT で広範囲の小腸壊死が疑われたが,上腸管膜動脈の血流に異常を認めず,非閉塞性腸管虚血症(NOMI)と考えられた。低体温と凝固異常を認めたため,一刻も早いショックからの離脱を目的に,再建を伴わない広範囲小腸切除術を短時間で施行し,ただちに集中治療を開始した。翌日に生理学的異常の改善を認め,残存壊死小腸の追加切除と腸吻合術を二期的に施行して軽快退院した。病理所見では腸管壁や腸間膜に血栓はなく,小腸粘膜の出血性壊死がみられ,NOMI に矛盾しない所見であった。ダメージコントロールサージェリーを適用することにより,NOMI のように著しい生理学的異常を伴う重症の内因性疾患でも救命の可能性が示唆された。
ISSN:1345-0581
2187-9001
DOI:10.11240/jsem.16.696