生体肝移植術後に生ずる腰痛に関わる因子

「I. 背景と目的」肝移植には生体肝移植と脳死肝移植があり, 欧米では脳死肝移植がほとんどを占めるのに対し, 日本では約90%が生体肝移植である. 生体肝移植は脳死移植に比してグラフト肝が小さく, そのためレシピエントの肝機能の回復に時間を要する. また, 周術期全体を通して何らかの合併症が起こる頻度が高く, 術後管理に難渋する. とくに, 周術期の呼吸器合併症は開腹手術の中でも発生率が高く, リハビリテーション治療(以下, リハ)として呼吸理学療法が行われることが多い. しかし, その具体的な注意点について, 呼吸や循環機能以外の観点からの指摘はされていない. 現在, 術後の呼吸理学療法では...

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Published in移植 Vol. 55; no. 3; pp. 319 - 324
Main Authors 金子, 順一, 横田, 一彦, 長谷川, 潔, 芳賀, 信彦, 藤原, 清香, 安井, 健, 赤松, 延久, 長田, 梨比人, 冨樫, 順一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2020
日本移植学会
Subjects
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.55.3_319

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Summary:「I. 背景と目的」肝移植には生体肝移植と脳死肝移植があり, 欧米では脳死肝移植がほとんどを占めるのに対し, 日本では約90%が生体肝移植である. 生体肝移植は脳死移植に比してグラフト肝が小さく, そのためレシピエントの肝機能の回復に時間を要する. また, 周術期全体を通して何らかの合併症が起こる頻度が高く, 術後管理に難渋する. とくに, 周術期の呼吸器合併症は開腹手術の中でも発生率が高く, リハビリテーション治療(以下, リハ)として呼吸理学療法が行われることが多い. しかし, その具体的な注意点について, 呼吸や循環機能以外の観点からの指摘はされていない. 現在, 術後の呼吸理学療法では, 呼吸器合併症の予防にはポジショニングと早期離床が, 各種臓器機能と全身状態が落ち着けば, 運動療法をプログラムのコアとすることが推奨されている. 一方, 肝移植の術後では, 腰痛が体位変換や離床, 運動療法を阻害する場面をしばしば経験する.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.55.3_319