緊急性を要する腹部大動脈瘤および冠動脈3枝病変が併存した進行口腔癌の治療経験

われわれは,緊急性を要する腹部大動脈瘤および無症候性の冠動脈3枝病変を併存した進行口腔癌に対して,腹部大動脈人工血管置換術および冠動脈バイパス術を先行した後に,口腔癌の根治手術を施行した症例を経験した。患者は66歳男性で口底癌を有し,術前画像検査で巨大な腹部大動脈瘤および無症候性の冠動脈3枝病変が認められた。本症例では破裂リスクがあり緊急性の高い腹部大動脈瘤に対して腹部大動脈人工血管置換術を行い,その2週間後に周術期の心筋梗塞のリスクを回避するために冠動脈バイパス術を施行した。冠動脈バイパス術後は待機期間が必要であったため手術待機期間中の腫瘍増大抑制目的に放射線治療を行った。30Gyの時点で放...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 34; no. 2; pp. 65 - 72
Main Authors 清水, 崇寛, 小川, 将, 牧口, 貴哉, 山口, 高広, 鈴木, 啓佑, 横尾, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2022
日本口腔腫瘍学会
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.34.65

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Summary:われわれは,緊急性を要する腹部大動脈瘤および無症候性の冠動脈3枝病変を併存した進行口腔癌に対して,腹部大動脈人工血管置換術および冠動脈バイパス術を先行した後に,口腔癌の根治手術を施行した症例を経験した。患者は66歳男性で口底癌を有し,術前画像検査で巨大な腹部大動脈瘤および無症候性の冠動脈3枝病変が認められた。本症例では破裂リスクがあり緊急性の高い腹部大動脈瘤に対して腹部大動脈人工血管置換術を行い,その2週間後に周術期の心筋梗塞のリスクを回避するために冠動脈バイパス術を施行した。冠動脈バイパス術後は待機期間が必要であったため手術待機期間中の腫瘍増大抑制目的に放射線治療を行った。30Gyの時点で放射線治療を終了し,口腔癌に対する根治手術を施行した。周術期の合併症は認められず術後経過は良好であった。 本症例では,重篤な冠動脈疾患があったが異常所見は認められず,無症状であった。一方,単純CTでは冠動脈の顕著な石灰化が認められた。本症例は糖尿病を合併しており,糖尿病患者においては,重篤な冠動脈疾患が存在しても神経障害により無症状である場合があり,単純CTによる冠動脈石灰化の検出が口腔癌患者を含めた口腔外科手術における術前スクリーニングとして重要であると考えられた。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.34.65