化学放射線療法中の口腔粘膜炎管理を行った症例

頭頸部がんに対する化学放射線療法(CRT)の有害事象である口腔粘膜炎による疼痛は,患者のQOLを低下させ,がん治療の完遂を困難にする.今回,われわれは術後CRTを受けている患者に対して口腔管理を行い,口腔粘膜炎および疼痛を制御した結果,がん治療の完遂に貢献できた症例を報告する. 患者は67歳,男性である.右側舌がん(T2N2bM0)に対して舌可動部半側切除術,右側頸部郭清術,遊離前外側大腿皮弁による再建術を施行した.術後の病理組織検査より切除断端陽性,頸部リンパ節の節外浸潤を認めたため,術後CRT(抗がん剤:シスプラチン,5-フルオロウラシル;2クール,強度変調放射線治療60Gy)を行うことと...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 68; no. 4; pp. 231 - 237
Main Authors 森田, 学, 益成, 美保, 志茂, 加代子, 丸山, 貴之, 水野, 裕文, 水川, 展吉, 横井, 彩, 三浦, 留美, 佐々木, 禎子, 小林, 暉政, 江國, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 2018
日本口腔衛生学会
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.68.4_231

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Summary:頭頸部がんに対する化学放射線療法(CRT)の有害事象である口腔粘膜炎による疼痛は,患者のQOLを低下させ,がん治療の完遂を困難にする.今回,われわれは術後CRTを受けている患者に対して口腔管理を行い,口腔粘膜炎および疼痛を制御した結果,がん治療の完遂に貢献できた症例を報告する. 患者は67歳,男性である.右側舌がん(T2N2bM0)に対して舌可動部半側切除術,右側頸部郭清術,遊離前外側大腿皮弁による再建術を施行した.術後の病理組織検査より切除断端陽性,頸部リンパ節の節外浸潤を認めたため,術後CRT(抗がん剤:シスプラチン,5-フルオロウラシル;2クール,強度変調放射線治療60Gy)を行うこととなった. CRT前から,口腔管理および衛生実地指導を継続して行った.CRT開始時はプラークの除去を中心とした口腔管理を行った.22Gy照射時点で口腔粘膜炎(Grade2)が発症したものの,その後軽度疼痛を認める程度で経過していた.42Gy照射時点で口腔粘膜炎の悪化(Grade3)および自発痛・接触痛を認めたため,治療完遂まで毎日,歯科衛生士がプラークの除去に加え,口腔粘膜保護を目的とした口腔管理を行った.その結果,56Gy照射時点で口腔粘膜炎は改善傾向を示し(Grade2),疼痛も緩和され,CRT完遂に至った. 術後CRT開始直後から口腔粘膜炎の状態に応じた口腔管理を行うことで,疼痛の制御が成功し,CRTの完遂に貢献できたと考えられる.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.68.4_231