虚血性合併症回避のため瘤の一部を残存させるクリッピングとコーティングで治療した前脈絡叢動脈瘤の治療結果と長期経過観察

前脈絡叢動脈(AchA)瘤のクリッピングは,AchAの血管径が細く,瘤壁からAchAが分岐している例があること,瘤の背側でのAchAの癒着例が多いことなどの理由から,クリッピングによる虚血性合併症のリスクが高いと考えられている.われわれはAchA動脈瘤のクリッピングの際には,AchAの血流温存を優先して瘤の一部を意図的に残し,残存部はフィブリン糊とベンシーツによるコーティング処置を行ってきたので,その治療成績と長期経過について調べた.2007年から2018年の間に直達術を行った全AchA瘤 63例のうち,クリッピング後の残存部に対してコーティングを行い,かつ術後のADLが自立した25例を対象と...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 53; no. 2; pp. 82 - 87
Main Authors 師井, 淳太, 清水, 宏明, 古谷, 伸春, 濱﨑, 亮, 吉田, 泰之, 石川, 達哉, 髙橋, 佑介, 青野, 弘明, 武藤, 達士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 2025
日本脳卒中の外科学会
Subjects
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ISSN0914-5508
1880-4683
DOI10.2335/scs.53.82

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Summary:前脈絡叢動脈(AchA)瘤のクリッピングは,AchAの血管径が細く,瘤壁からAchAが分岐している例があること,瘤の背側でのAchAの癒着例が多いことなどの理由から,クリッピングによる虚血性合併症のリスクが高いと考えられている.われわれはAchA動脈瘤のクリッピングの際には,AchAの血流温存を優先して瘤の一部を意図的に残し,残存部はフィブリン糊とベンシーツによるコーティング処置を行ってきたので,その治療成績と長期経過について調べた.2007年から2018年の間に直達術を行った全AchA瘤 63例のうち,クリッピング後の残存部に対してコーティングを行い,かつ術後のADLが自立した25例を対象とした.患者背景,動脈瘤の特徴,クリッピングの手技,虚血性合併症の有無,観察期間,術後再発や出血の有無について調べた.再発の評価は3D-CTAもしくはMRAで行った.年齢34-72(平均60)歳,女性:男性=19:6,瘤の大きさは2-7(平均4)mmで,破裂 7例,未破裂 18例であった.クリッピングはparallelクリッピングが88%であった.手術手技に伴うAchAの虚血性合併症は認めなかった.平均7.6年の経過観察期間で,AchA領域の虚血や瘤の再発や出血は認めなかった.AchAの血流温存を優先し,ネックの一部を残存させるAchA瘤へのクリッピングは,治療効果の高い安全なクリッピングの方法である.残存部に対する少量のベンシーツとフィブリン糊のコーティングが,瘤の再発や出血の予防に有効である可能性がある.
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.53.82