集学的治療を行った巨大な中顔面多形腺腫由来癌の1例

口腔癌の顎顔面領域への高度進展例に対する外科手術は,血管や神経が複雑に走行している部位へのアプローチが必要で,出血により手術操作が困難となる。また,広範囲な上顎腫瘍切除後に対する鼻口腔瘻の閉鎖および顎顔面補綴は,補綴装置の固定源を期待できないため非常に困難で,術後の気道管理や栄養経路の確保を含めた術前の治療計画が重要となる。今回われわれは,術前からの気道管理,胃瘻造設による栄養管理,動脈塞栓を併用した腫瘍切除および顎顔面補綴といった集学的治療により治療し得た,中顔面に高度進展した巨大な多形腺腫由来癌の1例を経験したので報告する。 症例は56歳男性。他院口腔外科で口蓋腫瘍の診断を受けるも自己中断...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 35; no. 1; pp. 7 - 15
Main Authors 鈴木, 大貴, 橋本, 和彦, 中島, 純子, 髙野, 正行, 吉田, 成緒, 平賀, 智豊, 片倉, 朗, 野村, 武史, 大金, 覚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2023
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.35.7

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Summary:口腔癌の顎顔面領域への高度進展例に対する外科手術は,血管や神経が複雑に走行している部位へのアプローチが必要で,出血により手術操作が困難となる。また,広範囲な上顎腫瘍切除後に対する鼻口腔瘻の閉鎖および顎顔面補綴は,補綴装置の固定源を期待できないため非常に困難で,術後の気道管理や栄養経路の確保を含めた術前の治療計画が重要となる。今回われわれは,術前からの気道管理,胃瘻造設による栄養管理,動脈塞栓を併用した腫瘍切除および顎顔面補綴といった集学的治療により治療し得た,中顔面に高度進展した巨大な多形腺腫由来癌の1例を経験したので報告する。 症例は56歳男性。他院口腔外科で口蓋腫瘍の診断を受けるも自己中断,腫瘍の進展を認め当院受診となった。生検の結果,多型腺腫由来癌の診断を得たのち,関連各科との協議を行い,根治術に先立って,胃瘻造設術,気管切開術,血管内塞栓術を計画した。術前に腫瘍出血を生じたが,事前の計画により,血管内塞栓術による止血が可能だった。上顎亜全摘については,塞栓術を併用したことで異常出血なく切除ができた。術後の咬合再建については,広範囲の顎欠損であったが,術前の治療計画を共有し,治療計画を進めた。結果,計画通りの経管栄養管理および即時栓塞子による早期の経口摂取再開が可能となった。術後2年が経過し,再発や転移なく,顎補綴装置も安定し使用出来ている。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.35.7