PPI長期内服患者の胃壁細胞腫大に関する検討

【背景】胃壁細胞は高ガストリン血症により代償性に長軸方向へ膨化するため,プロトンポンプ阻害剤(以下PPI)長期内服患者の病理標本で胃壁細胞が管腔側に突出してみえる現象(parietal cell protrusion : 以下PCP)を認めることがある.今回我々はPPI長期投与によるPCPの有無と酸分泌抑制関連合併症の有無を検討した.【方法】2015年1月から7月に実施した上部消化管内視鏡1399例から6カ月以上のPPI内服が確認された体中部胃底腺検体29例を対象とした.PCPの有無並びに酸分泌抑制関連合併症のうち,胃癌,大腸癌,病的骨折,貧血,クロストリジウム・ディフィシル(以下CD)感染症...

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Published inProgress of Digestive Endoscopy Vol. 88; no. 1; pp. 42 - 45
Main Authors 山形, 寿文, 中山, 沙映, 幡地, 正輝, 小松, 和人, 池嶋, 健一, 竹川, 義則, 有馬, 功, 諸井, 厚樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部 11.06.2016
日本消化器内視鏡学会関東支部会
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ISSN1348-9844
2187-4999
DOI10.11641/pde.88.1_42

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Summary:【背景】胃壁細胞は高ガストリン血症により代償性に長軸方向へ膨化するため,プロトンポンプ阻害剤(以下PPI)長期内服患者の病理標本で胃壁細胞が管腔側に突出してみえる現象(parietal cell protrusion : 以下PCP)を認めることがある.今回我々はPPI長期投与によるPCPの有無と酸分泌抑制関連合併症の有無を検討した.【方法】2015年1月から7月に実施した上部消化管内視鏡1399例から6カ月以上のPPI内服が確認された体中部胃底腺検体29例を対象とした.PCPの有無並びに酸分泌抑制関連合併症のうち,胃癌,大腸癌,病的骨折,貧血,クロストリジウム・ディフィシル(以下CD)感染症の有無を検討した.隣接する主細胞の上縁を結んだラインよりも突出している壁細胞をPCP陽性とした.【結果】29例中14例にPCPがみられた(48.3%).胃酸分泌抑制関連合併症はPCP陽性群と陰性群間で有意差のある項目はみられなかった.【考察】PCP陽性率が既報より低い点は比較対象が海外報告に限られている点,PPI内服期間の長短が及ぼす影響を検討したが原因は不明だった.胃酸分泌抑制関連合併症に有意差がない点は検体数が増えることで異なる結果が得られる可能性が考えられた.PPI長期投与患者におけるPCP陽性所見は胃酸分泌抑制の間接的証明と捉えることができるため,PCP陽性者はPPI代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型がHeteroEMやPMと関連している可能性が示唆される.また,PCP陽性者は酸分泌抑制関連リスクであるCDトキシンによる腸管感染症の高危険群である可能性が示唆される.
ISSN:1348-9844
2187-4999
DOI:10.11641/pde.88.1_42