聴性脳幹反応検査

聴性脳幹反応 (ABR) は蝸牛から下丘に至る聴覚路で誘発された反応で, 振幅は小さいが再現性が良好で睡眠の深度や意識レベルの影響なども認められないことから臨床検査として広く用いられている。本稿ではABRの測定法, 発生機序, 臨床応用などについて概説した。その要旨は次の如くである。(1) ABR各波の発生部位に関しては一部意見の不一致がある, (2) 有用な他覚的聴力検査法であるが, クリック誘発の反応は主として2~4kHzの聴力のみを反映している, (3) トーン・ピップによる誘発反応の有用性に関しては賛否両論がある, (4) 聴神経腫瘍が内耳道内に限局している場合には偽陰性もかなりあるが...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 49; no. 4; pp. 322 - 338
Main Author 草刈, 潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 2006
日本聴覚医学会
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.49.322

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Summary:聴性脳幹反応 (ABR) は蝸牛から下丘に至る聴覚路で誘発された反応で, 振幅は小さいが再現性が良好で睡眠の深度や意識レベルの影響なども認められないことから臨床検査として広く用いられている。本稿ではABRの測定法, 発生機序, 臨床応用などについて概説した。その要旨は次の如くである。(1) ABR各波の発生部位に関しては一部意見の不一致がある, (2) 有用な他覚的聴力検査法であるが, クリック誘発の反応は主として2~4kHzの聴力のみを反映している, (3) トーン・ピップによる誘発反応の有用性に関しては賛否両論がある, (4) 聴神経腫瘍が内耳道内に限局している場合には偽陰性もかなりあるが, それよりも大きな腫瘍では感受性は非常に高い, (5) 本態性後迷路障害, 多発性硬化症, 脳幹循環障害や橋髄内腫瘍, 意識障害, 脳死などの診断・評価や術中モニターとして極めて有用である。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.49.322