突発性難聴の病理

突発性難聴側頭骨病理報告の多くは難聴の回復しなかった症例に関するものである。今回はそれらの一部から蓋膜の病変 (rolled-up 像) について検討した。その結果, 同様の病変は既知のウイルス性疾患, 例えば麻疹, ムンプスなどにより難聴となった症例にも見ることができる。これらに共通した所見は歯間細胞が消失していることであった。 また実験的ウイルス性内耳炎においても上記の病変を観察することができ, この場合ウイルス抗原は蓋膜の他に歯間細胞にも存在していた。 以前に報告した突発性難聴症例を再検討した。蓋膜には rolled-up 像以外の様々な病態がみられるが, いずれも実験的ウイルス性内耳炎...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 49; no. 6; pp. 777 - 781
Main Author 野村, 恭也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 2006
日本聴覚医学会
Subjects
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.49.777

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Summary:突発性難聴側頭骨病理報告の多くは難聴の回復しなかった症例に関するものである。今回はそれらの一部から蓋膜の病変 (rolled-up 像) について検討した。その結果, 同様の病変は既知のウイルス性疾患, 例えば麻疹, ムンプスなどにより難聴となった症例にも見ることができる。これらに共通した所見は歯間細胞が消失していることであった。 また実験的ウイルス性内耳炎においても上記の病変を観察することができ, この場合ウイルス抗原は蓋膜の他に歯間細胞にも存在していた。 以前に報告した突発性難聴症例を再検討した。蓋膜には rolled-up 像以外の様々な病態がみられるが, いずれも実験的ウイルス性内耳炎に類似している。 以上のことから聴力改善のみられない高度な突発性難聴はウイルスが原因であろうと考察した。自験例では精神的なストレスが誘因となっており, これがウイルスの潜伏感染を再活性化したものと考えた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.49.777