排便後の意識消失で発症した心臓粘液腫による脳塞栓症の1例

症例は74歳男性.排便後に意識を消失し,意識が回復した後もめまいで歩行困難となり当院へ救急搬送された.左上下肢に失調を認め,頭部MRIにて両側小脳を中心に多発する急性期脳梗塞を認めた.発症後3時間20分より経静脈的血栓溶解療法を開始,症状は改善した.経胸壁心エコーにて左房内に可動性の腫瘤を認め粘液腫が疑われた.発症第14日目に摘出術を施行し病理学的に粘液腫と診断された.本症例の特徴的な発症様式から,排便による胸腔内圧の上昇をきっかけに粘液腫の一部もしくは表面の血栓が遊離し得ることが考えられた.バルサルバ手技様の動作や意識消失に引き続いて発症する塞栓症では心臓粘液腫の可能性も考慮すべきである....

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Published in臨床神経学 Vol. 56; no. 5; pp. 328 - 333
Main Authors 阿南, 知世, 池田, 知雅, 紙本, 薫, 大村, 眞弘, 佐藤, 千香子, 山田, 健太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経学会 2016
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ISSN0009-918X
1882-0654
DOI10.5692/clinicalneurol.cn-000856

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Summary:症例は74歳男性.排便後に意識を消失し,意識が回復した後もめまいで歩行困難となり当院へ救急搬送された.左上下肢に失調を認め,頭部MRIにて両側小脳を中心に多発する急性期脳梗塞を認めた.発症後3時間20分より経静脈的血栓溶解療法を開始,症状は改善した.経胸壁心エコーにて左房内に可動性の腫瘤を認め粘液腫が疑われた.発症第14日目に摘出術を施行し病理学的に粘液腫と診断された.本症例の特徴的な発症様式から,排便による胸腔内圧の上昇をきっかけに粘液腫の一部もしくは表面の血栓が遊離し得ることが考えられた.バルサルバ手技様の動作や意識消失に引き続いて発症する塞栓症では心臓粘液腫の可能性も考慮すべきである.
ISSN:0009-918X
1882-0654
DOI:10.5692/clinicalneurol.cn-000856