脳虚血損傷後の神経再生療法

1. はじめに 1990年代前半に成熟哺乳類の中枢神経系において, 自己複製能と多分化能を有した内在性神経幹(前駆)細胞が存在することが明らかとなり1), 哺乳類での中枢神経細胞は再生しないとの常識が覆されることとなった. これらの発見を契機にして, 中枢神経系の機能再建を目指した再生医学が注目され, 現在も急速な勢いで研究が進んでいる. 臨床的疾患としては, パーキンソン病などの慢性神経変性疾患への応用が研究の中心であったが, 脳卒中, 頭部外傷などの急性疾患への応用を目標とした基礎研究も近年進んできている. 中枢神経再生への具体的手法として, 移植療法が以前より試みられている. 移植細胞と...

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Published in脳卒中 Vol. 26; no. 4; pp. 530 - 534
Main Authors 桐野, 高明, 栗生, 俊彦, 中冨, 浩文, 岡部, 繁男, 田村, 晃, 川原, 信隆, 中福, 雅人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2004
日本脳卒中学会
Subjects
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.26.530

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Summary:1. はじめに 1990年代前半に成熟哺乳類の中枢神経系において, 自己複製能と多分化能を有した内在性神経幹(前駆)細胞が存在することが明らかとなり1), 哺乳類での中枢神経細胞は再生しないとの常識が覆されることとなった. これらの発見を契機にして, 中枢神経系の機能再建を目指した再生医学が注目され, 現在も急速な勢いで研究が進んでいる. 臨床的疾患としては, パーキンソン病などの慢性神経変性疾患への応用が研究の中心であったが, 脳卒中, 頭部外傷などの急性疾患への応用を目標とした基礎研究も近年進んできている. 中枢神経再生への具体的手法として, 移植療法が以前より試みられている. 移植細胞としては, 胚性幹細胞, 胎児脳より得た神経幹細胞, さらに胚性幹細胞からin vitroにて神経細胞へ分化させて移植を行う方法も研究されている. また, 最近は造血幹細胞が神経への分化能を有することが示され, 移植細胞の供給源として注目されているが, その分化能力への限界も示唆されており, 今後の研究が待たれる2).
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.26.530