Hemodynamic infarctionにより進行性の失語,失行を呈した1例

症例は75歳男性.進行する発語量の低下と右手の使いにくさを主訴に当科受診.頭部MRIで左頭頂・後頭葉の分水嶺領域の陳旧性脳梗塞に加え,左前頭葉に新たな梗塞とMRAにて左内頸動脈の狭窄を認めた.抗血小板薬を開始したが,その後も言語能力の低下と右手の巧緻運動障害が進行したため入院となった.標準失語検査では言語理解障害,呼称の低下,発語量の減少,復唱の障害があり混合性失語を呈していた.右側優位の肢節運動失行による巧緻運動障害と観念運動失行を認めた.脳血流シンチで左大脳半球の血流が低下しており,前方後方の分水嶺領域で顕著であった.入院前の血圧は120/70mmHg前後に低く管理されており,過度の降圧で...

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Published in脳卒中 Vol. 25; no. 3; pp. 328 - 333
Main Authors 岡本, 憲省, 奥田, 文悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2003
日本脳卒中学会
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.25.328

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Summary:症例は75歳男性.進行する発語量の低下と右手の使いにくさを主訴に当科受診.頭部MRIで左頭頂・後頭葉の分水嶺領域の陳旧性脳梗塞に加え,左前頭葉に新たな梗塞とMRAにて左内頸動脈の狭窄を認めた.抗血小板薬を開始したが,その後も言語能力の低下と右手の巧緻運動障害が進行したため入院となった.標準失語検査では言語理解障害,呼称の低下,発語量の減少,復唱の障害があり混合性失語を呈していた.右側優位の肢節運動失行による巧緻運動障害と観念運動失行を認めた.脳血流シンチで左大脳半球の血流が低下しており,前方後方の分水嶺領域で顕著であった.入院前の血圧は120/70mmHg前後に低く管理されており,過度の降圧で血行力学的脳梗塞を繰り返して失語,失行が進行したと考えられた.入院後は血圧管理を緩やかに行い,症状は改善された.主幹動脈に狭窄を有する脳梗塞患者では,降圧療法は高次脳機能の変動にも留意して行うべきである.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.25.328