輸血非施行手術の臨床的検討
緒言 従来手術による出血には輸血が行なわれてきたが, 最近, 血清肝炎をはじめとする種々の輸血副作用, 需要供給のアンバランスなど多くの問題が生じてきた. 一方, 少量の出血には輸血を行なう必要のないことが認められていたが, その適応や出血量の限界については不明の点が多かった. 更に最近の血漿増量剤の進歩, 希釈体外循環, 手術時の水分代謝などに関する新知見がえられるにしたがい, 手術出血と輸血の関係についてあらためて検討すべき段階にいたった. 著者は手術出血に対する輸血の適応を臨床的に新しい見地から知ることを目的とした. すなわち輸血を行わないで, 血漿増量剤その他の輸液のみを行ない, 障害...
Saved in:
Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 16; no. 2-3; pp. 53 - 70 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
1969
日本輸血学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 1883-8383 |
DOI | 10.3925/jjtc1958.16.53 |
Cover
Summary: | 緒言 従来手術による出血には輸血が行なわれてきたが, 最近, 血清肝炎をはじめとする種々の輸血副作用, 需要供給のアンバランスなど多くの問題が生じてきた. 一方, 少量の出血には輸血を行なう必要のないことが認められていたが, その適応や出血量の限界については不明の点が多かった. 更に最近の血漿増量剤の進歩, 希釈体外循環, 手術時の水分代謝などに関する新知見がえられるにしたがい, 手術出血と輸血の関係についてあらためて検討すべき段階にいたった. 著者は手術出血に対する輸血の適応を臨床的に新しい見地から知ることを目的とした. すなわち輸血を行わないで, 血漿増量剤その他の輸液のみを行ない, 障害なく安全に手術を行ない, かつ術後の回復を順調にすることを検討したが, そのさい当然のことながら出血量を一定範囲内に止める必要をみとめた. この出血量の限界(出血許容量)を個々の症例について, あらかじめ術前に知るためには, 出血による循環血液量の減少と輸液による血液希釈の2点における安全限界を求める必要があり, これらを満足させる条件を考慮して輸血非施行手術の出血許容量を, あらかじめ算出する計算式を作成した. これによって算出した範囲内の輸血非施行手術時の出血, 輸液にともなう循環動態その他について臨床的に各方面から検討を加え, 手術を安全に行なうための条件を求め, この計算式の実用性を明らかにした. |
---|---|
ISSN: | 0546-1448 1883-8383 |
DOI: | 10.3925/jjtc1958.16.53 |