フェニトイン歯肉増殖症における抗S-100蛋白抗体陽性ランゲルハンス細胞の上皮内分布および密度に関する免疫組織化学的研究

宿主免疫機能に関与するランゲルハンス細胞の歯肉増殖症における役割を調べる目的で, フェニトイン誘発性ヒト増殖歯肉組織中における動態を抗S-100蛋白抗体を用いて検索し, 全身疾患を持たない成人性歯周炎罹患歯肉組織における動態と比較検討した。フェニトイン歯肉増殖症患者ならびに成人性歯周炎患者それぞれ5名ずつを被検者とし, 歯周外科時に試料を採取してパラフィン包理連続切片を作製した。これらの切片にウサギ抗S-100蛋白ポリクローナル抗体を用いて免疫染色を施し, 歯肉上皮内におけるS-100蛋白陽性細胞の組織学的検索を行った。その結果, S-100蛋白陽性細胞は, 増殖症ならびに成人性歯周炎ともに歯...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 38; no. 2; pp. 168 - 175
Main Authors 國松, 和司, 尾崎, 幸生, 原, 宜興, 田尻, 公一, 加藤, 伊八
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 1996
日本歯周病学会
Subjects
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.38.168

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Summary:宿主免疫機能に関与するランゲルハンス細胞の歯肉増殖症における役割を調べる目的で, フェニトイン誘発性ヒト増殖歯肉組織中における動態を抗S-100蛋白抗体を用いて検索し, 全身疾患を持たない成人性歯周炎罹患歯肉組織における動態と比較検討した。フェニトイン歯肉増殖症患者ならびに成人性歯周炎患者それぞれ5名ずつを被検者とし, 歯周外科時に試料を採取してパラフィン包理連続切片を作製した。これらの切片にウサギ抗S-100蛋白ポリクローナル抗体を用いて免疫染色を施し, 歯肉上皮内におけるS-100蛋白陽性細胞の組織学的検索を行った。その結果, S-100蛋白陽性細胞は, 増殖症ならびに成人性歯周炎ともに歯肉上皮の基底層から有棘層にかけて散在性に存在していた。また, 歯肉上皮の単位面積あたりに存在するS-100蛋白陽性細胞数および総歯肉上皮細胞数に対するS-100蛋白陽性細胞数の存在比率を計測すると, いずれも増殖症歯肉において有意に高い傾向 (p<0.01) を認めた。さらに, 多くのS-100蛋白陽性細胞が存在する歯肉上皮直下結合組織中にCD3陽性細胞が浸潤しており, 特に増殖歯肉において顕著であった。以上の結果より, フェニトイン服用による増殖歯肉においては, 成人性歯周炎と比べ口腔上皮内にS-100蛋白陽性細胞が有意に増加することから, 本疾患においてこの細胞の果たす役割が増強されている可能性が示唆された。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.38.168