ヒトニフェジピン歯肉増殖症における抗PCNA抗体を用いた線維芽細胞の増殖に関する研究

代表的な薬剤誘発性歯肉増殖症の一つであるニフェジピン (NF) 歯肉増殖症における線維芽細胞の増殖能の変化ならびに歯肉増殖のメカニズムを解明する目的で, NF歯肉増殖症罹患歯肉 (R群), NF非感受性歯肉 (NR群), 歯肉の増殖を来す可能性のある薬剤を全く服用していないプラークに起因する増殖性歯肉炎罹患歯肉 (ND群) および臨床的健康歯肉 (対照群) に対して抗増殖細胞核抗原 (PCNA) 抗体を用いた免疫組織学的検索を行い, その保有細胞の組織内分布ならびに存在密度を比較検討した。各群からそれぞれ5名ずつ被検者を任意に選択し, 歯周外科時あるいは抜歯時に試料を採取してパラフィン包埋連続...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 39; no. 2; pp. 217 - 225
Main Authors 國松, 和司, 尾崎, 幸生, 原, 宜興, 田尻, 公一, 加藤, 伊八
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 1997
日本歯周病学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.39.217

Cover

More Information
Summary:代表的な薬剤誘発性歯肉増殖症の一つであるニフェジピン (NF) 歯肉増殖症における線維芽細胞の増殖能の変化ならびに歯肉増殖のメカニズムを解明する目的で, NF歯肉増殖症罹患歯肉 (R群), NF非感受性歯肉 (NR群), 歯肉の増殖を来す可能性のある薬剤を全く服用していないプラークに起因する増殖性歯肉炎罹患歯肉 (ND群) および臨床的健康歯肉 (対照群) に対して抗増殖細胞核抗原 (PCNA) 抗体を用いた免疫組織学的検索を行い, その保有細胞の組織内分布ならびに存在密度を比較検討した。各群からそれぞれ5名ずつ被検者を任意に選択し, 歯周外科時あるいは抜歯時に試料を採取してパラフィン包埋連続切片を作製した。これらの切片にマウス抗PCNAモノクローナル抗体を用いて免疫染色を施した。その結果, 各群の線維芽細胞および上皮細胞にPCNA陽性所見が見られ, なかでも単位面積あたりの線維芽細胞の総数に対するPCNA陽性線維芽細胞の百分率はR群>ND群>NR群の順に高く, R群とND群との間, R群とNR群との間およびND群とNR群との間にそれぞれp<0.05, p<0.01およびp<0.05で有意差を認めた。なお, NR群と対照群との間には有意差は認められなかった。また, 結合組織内の炎症性細胞浸潤密度の低い領域と高い領域での陽性線維芽細胞の比率を各群で比較したところ, NR群歯肉においてのみ有意差が認められたが, R群, NR群ではこれらの領域問で有意差を認めなかった。これらのことから, NF歯肉増殖症では線維芽細胞の増殖能が増強されている可能性が示唆されたが, 炎症性細胞浸潤数と増殖線維芽細胞との関連は明らかにはできなかった。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.39.217