エビデンスに基づいた直腸肛門周囲膿瘍·痔瘻の治療戦略

直腸肛門周囲膿瘍および痔瘻の診療における肛門管超音波検査,細菌培養検査,直腸肛門内圧検査の意義を前向きに検討した.(1)リニア観察とラジアル観察を併用した肛門管超音波検査によって痔瘻と非痔瘻性膿瘍の鑑別,痔瘻の病型分類,痔瘻の原発口の同定の正診率は有意に向上した.また,理学的所見,超音波検査ともに膿瘍形成期より炎症消退期のほうが正診率が高かった.(2)細菌培養検査では,痔瘻性膿瘍からは腸管由来の細菌群が,非痔瘻性膿瘍からは皮膚由来の細菌群が有意に高率に検出された.(3)括約筋非貫通型のII型痔瘻は瘻管開放手術を行っても術後の肛門機能への影響は軽度であったが,術前の肛門努力収縮圧低値症例は術後機...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 61; no. 7; pp. 364 - 377
Main Authors 田中, 良明, 豊永, 敬之, 松島, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2008
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.61.364

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Summary:直腸肛門周囲膿瘍および痔瘻の診療における肛門管超音波検査,細菌培養検査,直腸肛門内圧検査の意義を前向きに検討した.(1)リニア観察とラジアル観察を併用した肛門管超音波検査によって痔瘻と非痔瘻性膿瘍の鑑別,痔瘻の病型分類,痔瘻の原発口の同定の正診率は有意に向上した.また,理学的所見,超音波検査ともに膿瘍形成期より炎症消退期のほうが正診率が高かった.(2)細菌培養検査では,痔瘻性膿瘍からは腸管由来の細菌群が,非痔瘻性膿瘍からは皮膚由来の細菌群が有意に高率に検出された.(3)括約筋非貫通型のII型痔瘻は瘻管開放手術を行っても術後の肛門機能への影響は軽度であったが,術前の肛門努力収縮圧低値症例は術後機能障害の危険因子であった.一方,括約筋貫通型のII型痔瘻およびIII型痔瘻では,括約筋温存手術は瘻管開放手術に比べ術後の肛門機能障害の頻度は有意に低率であった.以上より,肛門管超音波検査,細菌培養検査,直腸肛門内圧検査は,直腸肛門周囲膿瘍·痔瘻の客観的かつ有力な補助診断法であり,それらの診断や治療方針の決定には積極的に用いるべきと考えられた.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.61.364