Fibronectinによる同種菌体凝集性および細菌のHydroxyapatiteへの付着性に関する研究

接着性タンパクの1つであるfibronectin (FN) による口腔細菌凝集性, 口腔細菌とhydroxyapatite (HAp) との付着性を知るために, 次の2種類の実験を行った。まず, ヒト血漿より部分精製したFNの3×26~3×2-1μg/ ml希釈溶液中に, 口腔細菌12菌種の細菌の懸濁細菌とHApの懸濁を行い, それぞれ比濁法で検索した。さらに, その界面性状をzeta電位測定によって解析した。その結果, 比濁法ではStreptococcus mutansを始めとして凝集性が促進される菌種がある反面, 逆にFusobacterium nucleatumのように凝集阻害を起こすも...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 32; no. 2; pp. 434 - 449
Main Author 田島, 一範
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 1990
日本歯周病学会
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.32.434

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Summary:接着性タンパクの1つであるfibronectin (FN) による口腔細菌凝集性, 口腔細菌とhydroxyapatite (HAp) との付着性を知るために, 次の2種類の実験を行った。まず, ヒト血漿より部分精製したFNの3×26~3×2-1μg/ ml希釈溶液中に, 口腔細菌12菌種の細菌の懸濁細菌とHApの懸濁を行い, それぞれ比濁法で検索した。さらに, その界面性状をzeta電位測定によって解析した。その結果, 比濁法ではStreptococcus mutansを始めとして凝集性が促進される菌種がある反面, 逆にFusobacterium nucleatumのように凝集阻害を起こすものもあり, FNの存在下での細菌とHApへの付着性でも同様の傾向を示した。一方, 細菌およびHApのzeta電位測定結果では, 全試料とも負の電位を示し, FN濃度上昇に伴ってそれぞれの値は±0に向かって減少し, Langmuir型等温式にほぼ適合した。この結果は, すべての菌種およびHApに対して, FNは凝集性や付着性を促進させることを示し, 比濁法の結果とは矛盾するものであったが, ここには, みかけ上の相違, 特異的あるいは非特異的結合, 結合の競合など, 種々の要因が考えられ, ひいては, プラーク形成における, FNの如き唾液タンパクと細菌との結合, 細菌とHApとの結合に複雑な要因が介在することが示唆された。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.32.434