2020年の労働者死傷病報告(休業4日以上と死亡)における日本標準産業分類と化学物質による疾病(がんを除く)の発生状況
目的:わが国の労働者死傷病報告(以下,死傷病報告)を利用した職場の化学物質による疾病(がんを除く)(以下,化学物質による疾病)に関する報告は,現在限られている.そこで,死傷病報告の化学物質による疾病の発生状況を,性別,日本標準産業分類の大・中・小分類による業種等について検討することとした.対象と方法:2020年1月から12月までに全国の事業場から労働基準監督署に提出された休業 4 日以上の死傷病報告のうち化学物質による疾病の244人を対象者とした.属性,化学品の分類および表示関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and...
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Published in | 産業衛生学雑誌 Vol. 67; no. 4; pp. 130 - 145 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本産業衛生学会
20.07.2025
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Subjects | |
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ISSN | 1341-0725 1349-533X |
DOI | 10.1539/sangyoeisei.2024-037-E |
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Summary: | 目的:わが国の労働者死傷病報告(以下,死傷病報告)を利用した職場の化学物質による疾病(がんを除く)(以下,化学物質による疾病)に関する報告は,現在限られている.そこで,死傷病報告の化学物質による疾病の発生状況を,性別,日本標準産業分類の大・中・小分類による業種等について検討することとした.対象と方法:2020年1月から12月までに全国の事業場から労働基準監督署に提出された休業 4 日以上の死傷病報告のうち化学物質による疾病の244人を対象者とした.属性,化学品の分類および表示関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals; GHS)の健康有害性分類,疾病部位,器官系別疾病,日本標準産業分類(大,中,小分類)等について,単純集計及びクロス集計を行った.結果:全体のうち,休業者は236人,死亡者は8人で男女比は4対1だった.対象者集団の取扱い化学物質の物質名又は製品名数の内訳は,1個216人(88.5%),2個以上28人(11.5%)で,また特別則に定める以外の危険物,有害物等が52.9%を占めた.日本標準産業分類の大分類は100%,中分類は94.7%,小分類は63.9%再分類出来た.産業別(大分類)では,製造業(43.9%),建設業(18.0%),サービス業(9.0%),卸売業,小売業(7.4%)の順で,建設業は全員男性だった.経験期間は1年未満が30.3%を占め,その内訳は70歳未満の幅広い年齢層で発生していた.休業見込期間1か月以上の疾病部位は下肢,上肢,頭部の順で,器官系別疾病は外皮系(67.2%[眼の疾患 11.9%]),中毒(24.6%),呼吸器系(7.8%)の順だった.取扱い化学物質のGHSの区分ありの健康有害性分類の区分あり群は特定標的臓器毒性(単回ばく露)(36.5%),特定標的臓器毒性(反復ばく露)(25.4%),眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性(25.4%),皮膚腐食性/刺激性(23.0%),急性毒性(いずれかに区分あり)(21.3%)の順だった.死亡者8人全員が労働者数49人以下の職場だった.結論:疾病者数や休業見込期間の減少には,従事開始後,経験年数を考慮した定期的な化学物質の安全衛生に関する確認,取扱う化学物質のリスクアセスメントに基づいた外皮系(特に,上肢,下肢,頭部[眼])の適切な防護具の選択,さらに小規模事業所への化学物質管理の支援が必要である. |
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ISSN: | 1341-0725 1349-533X |
DOI: | 10.1539/sangyoeisei.2024-037-E |