50歳代内因性うつ病男性4名のロールシャッハ・テスト 包括システムにおける主要変数及びうつ病尺度を中心として

「I はじめに」苦悩をもつ人のあり様をできるだけ正確に把握し, それを援助へと結びつけることが精神保健領域で働く者の重要な仕事の一つである. 筆者らは総合病院で働く臨床心理士として「その人のあり様をできるだけ正確に把握」するための手段の中で心理検査, 特にロールシャッハテスト(以下, ロテスト)のもつ有効性を認識している. たとえば, ICD-101)で「重症うつ病」, DSM-IV2)で「大うつ病」など, 操作診断基準で重篤なうつ状態にあると分類された人が数十名いるとして, 彼ら全員がまったく同じロールシャッハプロトコルを示すということはありえない. 重篤なうつ状態にあるという医学的に同一な...

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Published inこころの健康 Vol. 14; no. 2; pp. 76 - 84
Main Authors 元永, 拓郎, 津川, 律子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本精神衛生学会 1999
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ISSN0912-6945
2186-0246
DOI10.11383/kokoronokenkou1986.14.2_76

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Summary:「I はじめに」苦悩をもつ人のあり様をできるだけ正確に把握し, それを援助へと結びつけることが精神保健領域で働く者の重要な仕事の一つである. 筆者らは総合病院で働く臨床心理士として「その人のあり様をできるだけ正確に把握」するための手段の中で心理検査, 特にロールシャッハテスト(以下, ロテスト)のもつ有効性を認識している. たとえば, ICD-101)で「重症うつ病」, DSM-IV2)で「大うつ病」など, 操作診断基準で重篤なうつ状態にあると分類された人が数十名いるとして, 彼ら全員がまったく同じロールシャッハプロトコルを示すということはありえない. 重篤なうつ状態にあるという医学的に同一な状態とは別に, それぞれがもつ個性や独自の認知がロテストに表現され, そこから治療や援助への示唆が得られるのである. 一方, それとは矛盾するようだが, 同じ疾患に罹患していて, 同じ経過にいるということは, 似たようなロールシャッハスコアを導きやすい側面がある. たとえば, 精神病状態で連合弛緩が顕著な場合, その人がもつ世界で唯一無二の個性をまるで覆い尽くすように, 連合弛緩という精神病症状がロテストの全面に投射されてしまうのをしばしば臨床場面で経験する. したがって, 病院臨床家にとっては, 細かな個性や認知をロテストから読みとる能力を養うことも大切だが, その疾患に罹患し, ある経過にいる場合の典型的ロールシャッハ像をしっかりと自分の中に根づかせておくことも大切である.
ISSN:0912-6945
2186-0246
DOI:10.11383/kokoronokenkou1986.14.2_76